e国際刑事裁判所 より多くの国の参加が重要
- 2016.11.24
- 情勢/解説
公明新聞:2016年11月23日(水)付
人種や宗教など特定の集団に所属する人たちを狙った「集団殺害犯罪」、人の強制移住や奴隷化、強姦などの性的暴力を含む「人道に対する犯罪」、戦闘員ではない一般の人たちを無差別に殺害するなどの「戦争犯罪」、他国に武力で攻め入る「侵略犯罪」。
国際社会にとって重大なこれらの罪を犯した個人を国際法に基づいて訴追・処罰するのが国際刑事裁判所(ICC)である。2002年に設立され、加盟国は現在、日本をはじめ124カ国に上る。
ところが今、"法の支配"に欠くべからざる組織であるICCから脱退を表明する国が相次いでいる。加盟国は結束し、残留するよう説得すべきである。
最初に脱退を表明したのはアフリカ中部のブルンジだった。ヌクルンジザ大統領が反大統領派の国民を拷問、殺害しているとの指摘を受け、ICCが調査を開始したことに反発したためだ。
次が、アフリカ最大の経済規模を誇る南アフリカだ。ICCから逮捕状が出ているスーダンのバシル大統領が入国した際、身柄を拘束せず「独裁者をかくまった」と国際社会から批判を浴びた。南アは、ICCが「国家首脳の不逮捕特権を定めた国内法と相いれない」と反論、脱退を決めた。西アフリカのガンビアも離脱を発表した。
アフリカはICC加盟国全体の4割を超える。今回の件が引き金となり、アフリカ諸国の大量脱退となればICCの権威は失墜しかねない。
そもそもICCは、「国内のことに外から口を出すな」とする内政不干渉の原則を盾に見過ごされてきた犯罪の「不処罰の文化」を終焉させるために創設されたものであり、重大犯罪の防止という大きな意義がある。
内政不干渉との兼ね合いが易しくないのは事実であろうが、今一度、非加盟国に参加を促すことも含め、ICCの意義を確認すべきではないか。
一方で、国連安全保障理事会の常任理事国である米ロ中をはじめ、国連加盟国の約3分の1がICCに参加していない。参加国の中でも最大の分担金を支払うなど、運営に大きく貢献している日本が参加を働き掛けたい。