e福島沖地震 3.11の教訓は生かされたか
- 2016.11.25
- 情勢/解説
公明新聞:2016年11月25日(金)付
強い揺れとテレビを通して刻一刻と伝わる津波情報が、5年8カ月前の「あの日」を思い出させた。3.11東日本大震災の教訓がどこまで生かされたか。丁寧に分析し、さらなる対策を進めたい。
福島県沖を震源として22日早朝に発生したマグニチュード(M)7.4の地震。岩手県から東京・八丈島にわたる広い範囲に津波が到達し、東日本大震災以降では最大となる高さ1.4メートルの津波が観測された。
24日も、福島県沖を中心に地震が相次いだ。気象庁は、今後1週間程度は最大で震度5弱程度の地震と津波が発生する恐れがあるとしている。揺れや避難への備えは万全か、しばらくは十分な警戒を続ける必要がある。
今回の地震は、3.11を乗り越えて復興の歩みを進める東北の被災地に打撃を与えた。宮城県東松島市では収穫期を迎えたノリの養殖いかだが被害を受けたほか、地震の影響で岩手、宮城、福島では宿泊施設のキャンセルが相次いでいる。国や自治体はスピード感を持って対応策に取り組むべきだ。
3.11の教訓が生かされた点は少なくない。
情報提供の面では、各地でエリアメールやツイッターが役立つことが確認された。仙台市では地震発生直後から沿岸部のスピーカーや広報車だけでなく、ヘリコプターを活用した警戒の呼び掛けも行われた。地震発生3分後には首相官邸の危機管理センターに連絡室が設置されるなど迅速な初動対応は評価できよう。
一方、車で逃げる住民による渋滞が各所で発生するなど課題も残った。
避難先が遠方でない限り徒歩で逃げるとの原則を徹底する必要はあるが、沿岸部には高台まで距離があり避難に車を使用せざるを得ない地域が多くある。複数の移動ルートを確保するなど渋滞緩和策を改めて見直す必要があろう。宮城県では津波観測後の警報発令だった。原因を洗い出し、改善に役立てるべきだ。
高齢者など災害弱者の避難はスムーズだったか、また医療機関や福祉施設の対応はどうか。南海トラフ地震や首都直下地震が懸念される中、今回の地震を新たな教訓として生かしたい。