e国際学力調査 成績は向上も、学習意欲が課題

  • 2016.12.05
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年12月3日(土)付



教育改革の成果は見られた一方で、学習意欲の向上や多様な個性が生かされる教育には、いま一歩。さらなる学校現場への支援を進めたい。

世界の小学4年と中学2年の約52万人を対象にした2015年の国際数学・理科教育動向調査で、日本は算数・数学、理科の全教科で小、中ともに平均得点が前回を上回り、過去最高となった。国際教育到達度評価学会が11月29日、調査結果を公表した。

国際比較を見ても、理科の順位は小4が3位(前回11年は4位)、中2が2位(同4位)に上昇した。文部科学省は「ゆとり教育」から転換した現行の学習指導要領による授業時間と学習内容の増加や、全国学力テストを受けた指導の改善、さらに小1の35人学級導入が功を奏したと分析する。

大学生の低学力化も指摘される中、義務教育の充実が基礎学力の向上につながっていることは評価したい。何よりも、児童や生徒の未来にとって喜ばしいことだ。

一方、気掛かりな点もある。

数学や理科に関する意識調査で「楽しい」「得意」と答えた中2の割合は、改善傾向にはあるものの国際平均を大きく下回った。小学生では一部で国際平均を上回るほど高い学習意欲が、中学生になると急激に下がる傾向は03年以降変わっていない。要因を詳しく分析し、さらなる改善につなげる必要がある。

次期学習指導要領では課題の発見や解決に向けて主体的・協働的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」を重視する方向性が示されている。既に教育現場では「気象」の学習内容を生かして実際に天気を予想するなど、子どもの意欲を引き出す授業が導入されている例もある。

こうした知的好奇心を刺激する教育方法が成果を挙げるためには、少人数教育を一層推進し、一人一人の個性や学習状況に応じた、きめ細かな指導が必要になる。

とはいえ、教員は授業の充実以外にも生活指導や保護者への対応、さまざまな事務処理などに忙殺されているのが実情だ。教育現場に授業の創意工夫を奨励する上で、教員定数の増加やスキルアップへの支援が必要であることを指摘しておきたい。

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