eコラム「北斗七星」
- 2016.12.12
- 情勢/社会
公明新聞:2016年12月10日(土)付
1位沖縄、2位鹿児島、3位秋田......。これは方言「残存率」の都道府県ランクだ。日本語学者・真田信治氏の『方言の日本地図』(講談社)で示されている◆だが、沖縄や東北ではかつて、方言の使用が厳しく制約された暗い歴史がある。明治以降、中央集権化を進める政府は標準語の使用を強制。学校で生徒が方言をしゃべると、罰として「私は方言を使いました」という札を首にぶら下げるという過酷な指導も行われた◆方言の否定は地方の文化や習慣の否定に他ならない。近年は、方言の大切さが認識され、教育現場でも学び、伝える取り組みが行われるようになった。しかし、テレビなどのメディアの普及は、日本の隅々まで標準語をあふれさせ、方言の衰退を招いた。さらに東北では、東日本大震災で多くの被災者が住み慣れた地域からの避難、移転を余儀なくされ、多数の地域で方言が消滅の危機に瀕しているという◆そんな中、東京・渋谷の公園通りに先週、福島県飯舘村で「丁寧に」を意味する「までい」という方言を刻んだ石碑がお目見えした。来春、避難指示が解除される同村の復興を東京から応援しようという思いが込められている◆方言は東北の震災復興を支える絆だ。村の人々が故郷の言葉で明るく語り合える日が、一日も早く来ることを祈りたい。(千)