e年金制度改革法案 参院厚労委参考人質疑
- 2016.12.12
- 情勢/解説
公明新聞:2016年12月10日(土)付
山崎泰彦 神奈川県立保健福祉大学名誉教授の見解
給付水準 デフレの影響で現在高く
放置すれば将来の引き下げ招く恐れ
ルール見直し 高齢世代にも配慮
参院厚生労働委員会は9日、年金制度改革法案に関する参考人質疑を行った。これに先立ち行われた、山崎泰彦参考人(神奈川県立保健福祉大学名誉教授)の意見陳述の要旨は次の通り。
2004年の年金制度改正は(現役世代の)保険料の上限設定とマクロ経済スライド〓により、年金財政の持続可能性の確保をめざすものだったが、(過去に、物価が下落したのに年金額を据え置いた)特例水準の解消が遅れたことや、デフレ基調が続いたこともあり、同スライドが発動したのは15年度だった。
その影響を直接受けたのが基礎年金だ。現在の高齢世代の所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金の給付水準)が1割程度上昇する一方、将来の所得代替率が当初の想定以上に低下することになる。
現行制度は保険料の上限が設定され限られた財源を、現在と将来の高齢世代の間で分かち合う仕組みだ。(想定より高い)現在の高齢世代の給付水準の調整が遅れた場合、財政悪化した分、将来の高齢世代の水準をより引き下げることで、取り戻さざるを得ない。
今回の法案では、マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない(額面は下がらない)措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で、前年度までの未調整分を含めて調整する。もう一点は、賃金変動が物価変動を下回る場合に、賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底する。
前者は、現在の高齢世代に配慮しつつできるだけ早期に調整する観点から、また後者は、支え手である現役世代の負担能力(賃金)に応じた給付とする観点から提案されているものだ。
専門家の間では、景気後退期で、賃金・物価の伸びが小さい場合や、賃金・物価の伸びがマイナスの場合にも、マクロ経済スライドによる調整を(発動し)徹底すべきとの声が少なくない中で、国民合意を得る上で、ぎりぎりの選択がされた。