e臨時国会閉幕 世界の動向踏まえぬ野党質疑
- 2016.12.16
- 情勢/解説
公明新聞:2016年12月16日(金)付
臨時国会が事実上、閉幕した。
会期中は米国の大統領選、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の開始時期決定、イタリア国民投票など、世界に激震の走る出来事が続き、衝撃は今も収まらない。国際情勢が混沌とする中、日本の将来を見据えた論戦が求められた。
最大の焦点となった環太平洋連携協定(TPP)の承認は、自由貿易の拡大を経済発展の礎にする日本にとって重要な成長戦略だ。米国のトランプ次期大統領の「離脱発言」で先行きは見通せないが、12カ国が合意した自由貿易の新ルールを無駄にしてはならない。TPPの意義を再認識するよう、日本が主導する意味からも、国会承認は、その意思を内外に示せたといえよう。
しかし一部の野党、特に民進党は、世界で広がる保護主義をどう食い止めるのか、TPPに反対なら、それに代わる日本の通商戦略をどう描くか、示すこともないまま抵抗戦術で承認を阻もうとした。国益を考えない姿勢は野党第一党として看過できない。
会期末に成立した年金制度改革法の審議も、同様だった。同法は、将来世代の給付水準を確保し、制度の持続可能性を高めるのが狙いだ。ここでも、民進党は「年金カット法案」とレッテルを貼って反対するだけで、建設的な議論や提案はなかった。
英米伊3カ国の国民投票や大統領選では、グローバル経済の恩恵に浴せず、経済格差に苦しむ人々の存在がクローズアップされた。早速、英国は予算編成で低所得者向けの社会保障給付を手厚くする。
日本も再分配政策の拡充や、技術革新に追い付くための職業訓練の強化など、安全網の再整備を急ぐ必要がある。公明党が実現を求め、成立した改正年金機能強化法(無年金者救済法)でも分かるように、社会保障分野の代表格ともいえる年金制度が果たす役割は大きい。大事な制度の維持に何が必要か、民進党にはその認識も足りない。
終盤国会では、民進党の蓮舫代表が安倍晋三首相と初の党首討論を行ったが、国会運営を巡る応酬に時間を割き、国際環境の激変に直面する日本の針路を問うこともなく終わった。野党第一党が世界の動向に鈍感では困る。