eコラム「北斗七星」
- 2016.12.19
- 情勢/社会
公明新聞:2016年12月19日(月)付
1枚の写真で歴史が変わったといっては大げさだが、ある絵はがきの発見で、香川県丸亀市は日本女子サッカーの"発祥の地"となった。それまでは、神戸の女子クラブ結成を伝える1966年の報道が最古の記録だったが、この発見で歴史は一挙にさかのぼった◆大正時代の24年に撮影されたとみられる写真には、丸亀高等女学校(現県立丸亀高校)の生徒たちが、はかま姿でボールを追いかける姿が。「フットボールが好きで、いつも力いっぱい足でとばしておりましたので、体が細いのに大根足になりまして...」。同校創立80周年記念文集には卒業生の記述もある◆女子生徒たちがなぜ、サッカーに親しむことになったのか。その経緯については記録がなく、詳細は不明。だが、当時の同市内には、第1次世界大戦のドイツ人捕虜の収容所があり、地元民との交流の中で伝えられたと推測されている◆師走の風物詩「第九」にも同様の史実がある。18年6月1日、徳島県鳴門市にあった板東俘虜収容所のドイツ兵たちが、松江豊寿所長や地元民と温かな人道的交流を深め、「第九」を初演した話は有名だ◆ではなぜ、師走なのか。理由は諸説あるようだが、深くは問うまい。人間愛や世界平和を歌い上げた壮大な「歓喜の歌」の響きに、久しぶりに浸るのも悪くない。(祐)