e共同経済活動 日ロ平和条約へ信頼の醸成を
- 2016.12.19
- 情勢/解説
公明新聞:2016年12月19日(月)付
択捉、国後、色丹、歯舞の北方四島で日ロ両国が共同経済活動をスタートさせ、元島民の「自由往来」が進めば、両国民の相互理解も深まり信頼が醸成される。
領土問題を含む平和条約締結への合意をめざす環境づくりには、こうした努力の積み重ねが必要である。今回の日ロ首脳会談はそのための重要な一歩となった。
あらためて明らかになった領土問題に関する両国の主張の隔たりだけを重視する受け止め方はあまりに一面的すぎよう。プーチン・ロシア大統領が安倍晋三首相との共同記者会見で「経済的な関係を発展させて平和条約を後回しにするかといえば、そうではない。一番大事なのは平和条約の締結だ」と言い切ったように、両首脳が未来志向で解決をめざすためのスタート台に立ったことの重要性を評価する必要がある。
これまで、主権の帰属だけを争点にして主張をぶつけ合っても何も進まなかった。さまざまな交渉が続けられ、その中で共同経済活動を初めに提案したのはロシアだった。しかし、その実現に向けた議論も「主権」の壁で動かなかった経緯がある。
同じ轍を踏むことなく、合意された「特別な制度」の下での共同経済活動を具体化させなければならない。
「特別な制度」には当然、経済活動を進める上で不可欠となる取引の安全を図るための法整備が含まれる。しかし、法律問題は主権問題につながるため交渉はそう簡単ではあるまい。プーチン大統領は共同経済活動はロシアの主権の下で行うとの主張だが、共同経済活動の声明では「日本国及びロシア連邦の立場を害するものではない」と明記されている。平和条約締結の基盤づくりにつながる経済交流の実現を期待したい。
また、元島民の「自由往来」も早期に実現させたい。北方四島で「自由往来」が認められたことは高齢化が進む元島民の希望につながった。
公明党の山口那津男代表は領土問題について「人や経済交流の積み重ねの後に、平和条約締結と領土問題の解決もある」と述べた。信頼醸成を基本とする新たなアプローチの成功に向けた両国の努力に期待したい。