e真珠湾慰霊 和解と寛容を平和築く力に
- 2016.12.29
- 情勢/解説
公明新聞:2016年12月29日(木)付
かつて激しい戦火を交えた日本と米国が、「和解の力」を世界に発信する歴史的な日となった。
安倍晋三首相とオバマ米大統領は27日(日本時間28日)、1941年に旧日本軍が奇襲攻撃を行ったハワイの真珠湾を訪れ、追悼施設「アリゾナ記念館」で犠牲者を慰霊した。
現職首相の同記念館訪問、そして日米の首脳がそろって真珠湾で慰霊を行うことは、いずれも初めてである。ここに至るまで開戦から75年もの歳月を要したことに感慨を覚えずにはいられない。
犠牲者を悼んだ後に行われた演説で両首脳は、共に和解や寛容の必要性を強調した。
安倍首相は、「不戦の誓いを貫く」との決意をあらためて表明し、戦後日本の復興と国際社会への復帰にリーダーシップを発揮した米国が示した寛容の精神に言及。両国を結び付けたのは「和解の力」であるとして、日米同盟を「希望の同盟」と位置付けた。
紛争が絶えない国際社会にあって憎悪の連鎖を断ち切るには、和解や寛容の精神が大きな力となるだろう。これを日米両国が訴え続けることで、世界に希望を送る役割を果たせるに違いない。
オバマ氏は、「平和の恩恵は常に、戦争の略奪品に勝る」と述べ、これが「神聖な真珠湾の不朽の真実である」と訴えた。
平和に対する揺るぎない確信が伝わってくるようだ。今年5月に現職の米大統領として初めて被爆地広島を訪問したのも、オバマ氏の一貫した姿勢の表れといえよう。
日米両国は強固な同盟関係を築いてきた。それでも日本にとっては広島、長崎への原爆投下が、米国にとっては真珠湾攻撃が、わだかまりとなっていた。
こうした中で今年、オバマ氏が広島を訪問し、安倍首相が真珠湾を訪れたことは、両国が「和解の力」で不幸な過去を乗り越えてきた事実を、両国国民のみならず国際社会に強く印象付けたのではないか。
振り返れば、分断や対立が世界に暗い影を落とす一年だった。それだけに、日米両国がその絆を強くし、引き続き日米同盟に基づき世界の平和と繁栄に寄与する関係でありたい。