eAEDの効果検証 救命率未使用時の2倍

  • 2017.01.10
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年1月8日(日)付



市民使用の有効性判明
9年で835人の生存に寄与
適切な配置へ公明党の役割大きい
京都大学健康科学センター 石見拓教授に聞く



心臓の停止時に電気ショックを行い、救命措置ができる自動体外式除細動器(AED)の普及効果を検証した研究成果を、京都大学健康科学センターの石見拓教授ら研究グループが医学系の最高峰とされる学術雑誌「The New England Journal of Medicine」(昨年10月27日付)で公表した。AED普及の意義や救命率向上への課題について石見教授に聞いた。


――今回公表したAEDの有効性について。


石見拓教授 総務省消防庁の統計を基に分析・推計したところ、9年間で835人がAEDを使用したからこそ助かり、社会復帰したと判明した。救命率はAEDが使われなかった場合と比べ約2倍にも上った。AEDの使用が市民にも認められ、普及することの有効性を示すことができた。

一方で、心臓が原因で突然死する年間約7万人に対し、AEDが効果的に使えていない実態もある。現在、単なる「AEDの普及」から、「救命率の向上につながる救命体制の構築」を進める政策段階に移っていることを知ってほしい。


――その方策は。


石見 いかに素早くAEDを使えるようにするかだ。心停止は1分処置が遅れると救命率が10%減るため、ファーストタッチは救急隊よりも市民の方がずっと救命効果が高い。

そこで、例えば「コンビニに行けばある」といった誰にでも分かる場所への配置が必要となる。加えて、これまで心停止が起きた場所は消防機関が把握しているから、そのデータを参考に、適正な設置と設置場所の周知を進めたい。関心が薄かった人への講習も重要だ。公明党は全国的な運動を展開する力がある。行政の取り組みのリード役を期待している。


――講習のポイントは。


石見 小学校で駅伝の練習中に心停止した児童が具体例だ。現場にいた9人の先生たちは心肺蘇生の講習を受けていたにもかかわらず、AEDを使用することができなかった。心停止後は死戦期呼吸といって、ゆっくりあえぐような呼吸をすることがある。それを見て、息が普段通りか分からなかったと証言している。

心停止の現場はものすごく混乱し、判断に迷うのは当然だ。私たち専門家も、この反省を踏まえて心肺蘇生のガイドラインを見直し、「迷ったら心肺蘇生をスタートする」とした。講習では使い方と同時に、そうした状況を想定したい。


――心臓突然死はなくせるか。


石見 救命体制を整えれば、スポーツ中や学校での心臓突然死ゼロをめざすことは決して不可能ではない。例えば、AEDを周到に準備した東京マラソンでは、心停止7例中7例が救命できた。学校では、心停止が年に20~40件起きていて、その場所の8割がグラウンド、プール、体育館であることも分かっている。数分以内にAEDが届き電気ショックができる体制を整えたい。

その上で、児童・生徒にもAEDを含む心肺蘇生を教えていくことが必要だ。命の大切さを学ぶ絶好の機会にもなる。

専門家として、体育のカリキュラムなどに実技を伴う心肺蘇生の指導を導入するよう提案し、副教材と教員向け解説書の配付もしている。教育への導入は、心肺蘇生を社会に広げ、救命率の向上に直結していく。公明党にもぜひ後押しをお願いしたい。

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