e救急車迷った時の「#7119」
- 2017.01.10
- 生活/生活情報
公明新聞:2017年1月10日(火)付
自治体が注目する相談ダイヤル
医師、看護師が24時間対応
症状の緊急度を判定して案内
急な病気やけがなどで救急車を呼ぼうか迷った時、電話で医師や看護師に緊急度を判断してもらう―。近年、東京消防庁が全国に先駆けてスタートさせた救急相談ダイヤル「#7119」を導入する自治体が増えるなど、注目を集めている。総務省消防庁も、自治体の施設整備に補助を行い、普及をめざしている。導入した自治体の取り組みを紹介する。
東京が先駆け
#7119は、24時間365日体制で医師や看護師などの相談員が、急病やけがの応急処置、緊急性についてアドバイスするほか、医療機関の案内を行う。相談員が必要と判断すれば、救急車の出動を要請する。
東京消防庁は、増え続ける救急要請に適切に対応していくため、2007年6月から救急相談センターによる電話窓口「#7119」業務を始めた。
同センターは、都医師会や都福祉保健局、救急医学に関する専門医、東京消防庁でつくる「運営協議会」により運営されている。
#7119の受付件数は年々増加しており、14年に33万865件、15年で37万5458件に達した。このうち15年の受付件数の内訳を見ると、救急搬送が必要と判断し、119番につないだ件数は、全体の1割にも満たない2万5576件だった。また、実際に救急搬送した患者で、医師が「入院の必要なし」と判断した軽症者の割合が、#7119導入前(06年)の60.3%から、13年には51.6%に減っている。
しかし、14、15年と軽症患者の搬送割合が増加。東京消防庁は、今後さらに高齢化により救急車の要請が増えるとみられることから、「#7119の周知と利用促進を図る」方針だ。
都内在住の男性(58)は昨年12月中旬、同居する父親(91)が、体のむくみのほか、呼吸が苦しいなどの症状を訴えた。男性の父親は以前も同じような症状が起きたことがあり、「かかりつけの主治医に診てもらえばいい」との思いもあったが、万が一に備え、#7119を利用した。
電話口で応対した看護師に症状を伝えると、救急車を呼ぶよう指示を受けた。救急搬送された病院での診断は心不全。すぐさま治療が施され、8日間の入院生活を経て、昨年末に無事に退院した。
男性は「#7119で医師や看護師からの診断を聞き、自分が考えていた以上に重い症状だと分かりました。大事に至らず助かりました」と語った。
過疎地域でも効果 和歌山
和歌山県の田辺市消防本部は、田辺市と上富田町全域を管轄している。紀伊半島の海岸沿いから山間部の過疎地域まで合計1084平方キロメートルという広大なエリアのため、「一度、救急車が出動すると、消防署に戻るまで相当時間は掛かる」(同市消防本部警防課)のが現状だ。
そこで、2012年10月から、#7119を導入した。窓口業務には、緊急度を判定する医療現場での豊富な知識と経験が必要となる。地元の医師や看護師では人数が足りないなど十分に対応できないため、都内で医師や看護師によるコールセンター事業を展開する民間会社に窓口業務を委託している。
#7119の相談件数は、住民への周知もあり、14年度の1827件から15年度は2194件と増加。その一方で、救急車の出動件数は、14年の5243件だったが、15年は4933件と約300件減少した。
同市消防本部警防課は「高齢者が多い地域でもあるので、相談することで不安が和らぐ場合もある。緊急性が高いかどうか、判断に迷ったら、電話してほしい」と呼び掛けている。
全国へ専門家を派遣 総務省
総務省消防庁のまとめによると、24時間体制で#7119を実施している自治体は、東京都、和歌山県田辺市(上富田町を含む)のほか、大阪府、奈良県、福岡県、札幌市(石狩市など周辺4市町村含む)、横浜市で、全国民に占める人口カバー率は約27%に上る。また、宮城県や神戸市などが17年度の導入に向けて検討している。
同庁は、09年から#7119事業を立ち上げる自治体への補助事業を開始。また、同庁の有識者会議「救急業務のあり方に関する検討会」(座長=山本保博・一般財団法人救急振興財団会長)も、高齢化・人口減少が進む中、#7119など救急電話相談事業の普及促進が重要として、消防庁に都道府県への周知を強化するよう求めている。
17年度予算案では、すでに導入済みの自治体で運営に携わっている医師や看護師をアドバイザーとして各地に派遣し、ノウハウを広める新規事業を盛り込んだ。同庁担当者は「#7119導入により医療機関側の負担軽減につながったケースを分析し、全国への普及を促していきたい」と語る。