e水道事業の維持 民間の力を最大限に生かせ

  • 2017.01.10
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年1月10日(火)付



水質が非常に良く、料金も安価であるため、まさに「湯水のごとく」大量に日常生活で利用できる日本の水道水は、世界的に見ても珍しい。

しかし、この「清浄にして豊富低廉」な水の供給を可能にする日本の水道の維持が今、危ぶまれている。

政府は先月、公共施設やインフラ(社会資本)の所有権を維持したまま、運営権を民間に売却にする「コンセッション方式」を水道事業にも活用するための法整備を進めることを決めた。

水道事業は自治体が担っているが、厚生労働省によると、自治体が経営する水道事業のほぼ半数が赤字になっているという。また、水道事業に携わる職員が高齢のため退職するなどして、30年前に比べると3割も減った。水道事業の収支改善と同時に、水道インフラの工事などのノウハウを蓄積している民間企業もあるため、技術者の維持と継承という観点からも、民間の力を活用する必要がある。法整備に向けた議論を国会でしっかり進めてもらいたい。

とりわけ水道の基幹施設である管路の老朽化が深刻だが、自治体の財政難や人手不足を理由に、更新のための工事がほとんど進んでいない。

国土交通省によると、老朽化した水道管の破損による道路の陥没事故は全国で年3000~4000件起きている。にもかかわらず、水道管路の更新率は2014年度でわずか0.75%。厚労省は、このままだと老朽化が進む全ての管路の更新に130年かかると警告する。

管路更新の需要に早急に対応するためにも民間の力は頼りになる。例えば、三菱商事などが出資する水サービス専門会社の水ing(東京都港区)と広島県企業局とが12年に創立した共同出資会社「水みらい広島」が参考になる。国内初の民間主導による官民連携型水道事業だ。

業務の効率化を進めるなどして、売上高は、12年度に600万円だったのが15年度には約13億円に増大。従業員も県からの派遣と出資会社からの出向などで13年の7人から16年には141人に増やし、管路の更新事業に注力できる体制を築いている。民間の参入を促進しつつ、水道危機を乗り越えたい。

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