e公立図書館 街づくりに"知の拠点"生かそう
- 2017.01.13
- 情勢/解説
公明新聞:2017年1月13日(金)付
地域の図書館を訪れると、老若男女を問わず多くの人が読書を楽しんでいる。こうした"人を集める力"を街づくりに生かせないか。
日本図書館協会が全国の自治体に行った調査によれば、図書館で街づくりや地域振興を目的とした事業を行う自治体は、497(回答数の約47%)に上った。
岩手県紫波町では、企画展示やトークイベントを開催して農家と消費者の情報交換の場としている。沖縄県那覇市は、地域がん診療連携拠点病院から、がん関連図書の提供を受けて市民の意識啓発に役立てている。公立図書館による地域貢献のあり方はさまざまで、興味深い。
図書館の設置や運営について規定した図書館法には、図書館の活動の一つとして、住民の教育活動の機会提供が定められている。今後、より多くの公立図書館で地域貢献の活動が進むことを期待したい。
まして、少子高齢化が加速する日本にあって、地域の活力をどう維持していくかは全国共通の課題にほかならない。この点で、図書館の持つ役割の重要性を各地の自治体が強く認識すべきであろう。政府も先進事例を積極的に紹介し、全国の公立図書館の取り組みを後押ししてはどうか。
同時に、公立図書館を取り巻く環境の厳しさに目を向けることも忘れてはならない。
公立図書館は全国に約3300館あり、この30年間に約2倍に増えた。しかし近年、自治体財政が厳しさを増し、図書購入費の減額傾向が続いている。こうした状態が続けば必要な資料をそろえられず、サービスの維持が困難になりかねない。
雑誌のカバーに広告を掲載することで購入費を企業に負担してもらう「雑誌スポンサー制度」を導入する自治体が増えているが、こうした知恵を絞る努力も必要だろう。
人材面でも課題を抱えている。選書の決定など重要な判断に関わる図書館司書は、増加傾向にあるものの、内訳を見ると非常勤が多く、専任の司書は減少している。
地域の「知の拠点」であるべき公立図書館には、地域の特性や課題に精通し、継続して関われる人材が欠かせない。専任司書の配置も進めていくべきである。