eビッグデータ活用 保健医療の向上へ国民的合意を
- 2017.01.16
- 情勢/解説
公明新聞:2017年1月16日(月)付
健康と長寿は現代人の切なる願いである。
一般的な医療情報だけでなく、自身の健康診断の結果や病歴などに基づいた具体的な健康法や治療法が分かればこれほど心強いことはない。
しかし現在、個々人の健康に関する情報は病院や薬局、健康診断を実施する自治体などで別々に管理され、それらを全てつなげて一人のデータとして分析できる仕組みにはなっていない。
それを可能にするシステム作りが動き出す。政府は、健康に関するデータを有効活用するため、保健医療分野に高度な情報通信技術(ICT)を導入する「次世代型保健医療システム」の構想を示している。このほど、この構想を担う「データヘルス改革推進本部」の初会合が開かれた。
健康寿命を延ばすことは、国民皆保険を中心とした日本の保健医療制度を、高齢化が進む将来までも維持するために必要な基盤作りにもなる。日本の高齢化率は26%で世界最高だ。高齢化が進む世界の模範となる制度にしたい。
レセプト(診療報酬明細書)やカルテ、保険者が加入者に対して実施する特定健康診査(特定健診)、自治体や学校の健診などは電子データ化され、コンピューターによって処理・分析することが可能だ。データは日々、膨大に蓄積されつつあるが、現在、こうした膨大な電子データをビッグデータと呼び、それを自在に分析するための技術開発が進んでいる。
政府が2020年の本格稼働をめざす次世代システムでは、一人のあらゆる健康データを時系列につなげて健康相談の資料にしたり、特定の病歴をもつ全ての人のデータをつなげて研究することも可能になる。
これが動き出せば、災害などで主治医以外の診察を受ける場合や、救急搬送された場合でも必要なデータを準備できる。また、同じ病気でも経過が異なる症例を全て分析すれば、新たな治療法や新薬の開発にも役立つ。
ただし、健康に関する情報は最も機微な個人情報である。プライバシー保護など国民的合意が得られるよう議論を深める必要がある。患者、国民本位の情報制度になることを期待したい。