e感染症対策 予防・治療研究で世界水準めざせ
- 2017.01.18
- 情勢/解説
公明新聞:2017年1月18日(水)付
危険性の高い病原体に関する研究を進め、人類を脅かす感染症への対策を一層強化する契機としたい。
政府は2017年度予算案に、エボラウイルスなど最も危険度が高い病原体を扱える研究拠点として「バイオセーフティーレベル(BSL)4」施設の設計費など約4億円を盛り込んだ。設置を計画する長崎大学が長崎県や長崎市の協力も得て2020年の稼働をめざす。
感染症の脅威は年々高まっている。地球温暖化は病原体を媒介する生物の生息域を広げ、交通機関の発達は世界的な感染を容易にした。従来の薬が効かない耐性菌も現れている。実際、14年にはエボラ出血熱が西アフリカを中心に猛威を振るい、昨年はジカ熱の感染が日本でも確認された。こうした中、危険度の高い病原体に関する実験が可能な施設を国内で整備する意義は大きいと言えよう。
BSL4施設は世界23カ国・地域に設置されている。日本では検査などを目的に東京都武蔵村山市で稼働しているが本格的な研究は行っていない。このため研究者は欧米などの施設を利用せざるを得ず、仮に新種のウイルスが世界的に流行した場合も情報は海外頼みとなり、ワクチンや治療薬が開発されても日本での利用が後回しとなる恐れがある。この点からも、研究拠点の国内整備は喫緊の課題だ。
公明党は国民の生命保護と国際協力を進める観点から、山口那津男代表が14年10月の参院本会議でBSL4施設をはじめとする高度安全実験施設の整備を訴えた。研究拠点の新設を機に、国は関係省庁や他の研究機関とのネットワークを構築して予防や治療に関する研究を充実させ人材育成にも注力してほしい。
危険病原体を扱うことに対する周辺住民の懸念にも丁寧に答えなければならない。海外の先進事例を生かし、地震や火災、テロなどに対し世界最高水準の安全性を備えた設備を整える必要がある。加えて、ソフト面の安全確保も不可欠だ。運営管理体制の明確化や、災害を想定した訓練の充実などが求められよう。
何より、研究の目標や成果の「見える化」を可能な限り進め、地域との信頼関係を構築する姿勢が重要だ。