eトランプ米大統領始動
- 2017.01.31
- 情勢/国際
公明新聞:2017年1月31日(火)付
日米首脳で信頼構築を
世界経済、混乱の兆候に懸念
山本 武彦 早稲田大学名誉教授
米国のドナルド・トランプ新大統領が始動した。米国政治、経済の変化と国際情勢に与える影響などについて、山本武彦・早稲田大学名誉教授に聞いた。
2000年以降、3人の米大統領が生まれたが、最初のブッシュ大統領はユニラテラリズム(単独行動主義)、オバマ大統領はマルチラテラリズム(多国間協調主義)というスタンスで外交政策を進めてきた。
それが今回、トランプ大統領では、ユニラテラリズムに戻ったことに加え、バイラテラリズム(二国間均衡主義)に変わってきたことが大きな特徴ではないか。
ユニラテラリズムは言うまでもなく、「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)で徹底的に国益を追求することだ。バイラテラリズムは、TPP(環太平洋連携協定)の永久離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)の見直し、二国間の貿易不均衡の見直しに象徴されるが、メッセージとしては非常に強力な保護主義、単独主義の表れだ。
TPPからの永久離脱は、自由貿易に対する反旗という意味で、米国が第2次世界大戦後に樹立してきた(1)自由貿易(2)多国間主義(3)無差別貿易―の貿易の大原則に明らかに背を向けることになる。これは、世界の貿易秩序に大きな修正を来しかねない。世界経済に混乱を生む、非常に不安かつ不吉な兆候を示しているのではないかと懸念している。
日本としては、近く行われる日米首脳会談を通じて、トランプ政権との信頼関係を構築していくことがポイントだ。まずは、外交・安全保障の基軸は日米同盟であり、最も重要な同盟関係であることを確認し合うこと。もう一つは、自由主義と民主主義を守るという最も重要な理念を共有し合うことがカギだ。
その上で今後、バイラテラリズムの中で米国が求める対応を、日本としても考えていくことになるだろう。