eサイバー攻撃 狙われるインフラどう守るか
- 2017.01.31
- 情勢/解説
公明新聞:2017年1月31日(火)付
サイバー攻撃で狙われるのは、私用のパソコンに保存されている個人情報や、政府や企業が管理している機密情報だけではない。生活の基盤となるインフラ(社会資本)に対するサイバー攻撃も多発しており、対策を急ぐ必要がある。
インフラを狙うサイバー攻撃の特徴は、物理的損害を生じさせることにあり、人命にも及ぶ極めて危険なものだ。
実際、トルコでは、石油パイプラインの管内の圧力を制御する設備がサイバー攻撃により乗っ取られ、爆発した。また、スペインの格安航空会社の中央管制システムがコンピューターウイルスに感染した結果、航空機が離陸に失敗し、炎上。乗員乗客175人中、154人が死亡するという大惨事となった。
日本も決して人ごとではない。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)によると、目立った被害こそまだないが、日本における重要インフラを狙ったサイバー攻撃の発生件数は2011年度の15件から、13年度では155件と急増している。
背景に、さまざまなモノをインターネットに接続するIoT(モノのインターネット)技術の普及がある。稼働状況のデータを収集することで効率的な維持管理を実現するなどの目的で、インフラ設備もインターネットにつながれることが多くなった。ここがサイバー攻撃の新たな標的となっているのである。私たちの暮らしの安全に対する重大な脅威といえよう。
政府は今月、インフラへのサイバー攻撃に対する防護を強化する行動計画案を了承した。航空、鉄道、ガス、電力など13分野の主要事業者を「重要インフラ事業者」、金融庁、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の5省庁を「重要インフラ所管省庁」に指定し、情報を共有しながら、協力して攻撃を防ぐ体制を構築するという。
インフラ設備の制御システムをサイバー攻撃からどう守るのか。国際社会とも連携しながら有効な対策を講じる必要がある。
特に、大規模イベントはサイバー攻撃の対象になりやすいという。20年の東京五輪に向けて、政府は対策に本腰を入れてほしい。