e福島原発廃炉 不退の覚悟と英知の結集を
- 2017.02.06
- 情勢/解説
公明新聞:2017年2月6日(月)付
前途の険しさが改めて突き付けられた格好だ。東京電力と国は、廃炉に向けた不退の覚悟を新たにしてほしい。
メルトダウン(炉心溶融)した東電福島第1原発2号機の原子炉格納容器内の放射線量が、最大で毎時530シーベルトもあることが明らかになった。
事故後の2012年に観測した過去最高の毎時73シーベルトをはるかに上回る値で、数十秒の被ばくで人が死に至るレベルだ。東電による遠隔操作カメラの調査から分かった。
東電が公開した画像からは、圧力容器の真下にある鉄製の作業用足場に黒っぽい堆積物があるのも確認された。溶け落ちた核燃料(デブリ)の塊と見られる。
足場にはまた、堆積物が広範囲に付着し、約1メートル四方の穴が開いていることも判明した。デブリの熱で床が溶けた可能性があるという。
今回の調査に続き、東電は今月中旬までに自走式ロボット「サソリ」を炉心直下に投入し、デブリの広がりの様子などを調べる予定だ。
だが、これだけ高い線量と激しい損傷を前にしては、さすがの「サソリ」も自由に動き回ることはできまい。調査計画の見直しは必至だろう。
調査の遅れは、東電と国が21年中の開始をめざしている最難関作業の一つ、デブリ取り出しの遅れを意味する。
それでなくとも第1原発では、汚染水対策や使用済み燃料搬出などデブリ取り出し前に済ませなければならない作業も遅れている。30~40年かかるとされる廃炉工程は、一層不透明さを増したと断じざるを得ない。
とはいえ、今回の調査で原子炉内の様子が初めて分かった意義が小さくないのも事実だ。これを機に、今後、炉内の実態がより鮮明になってくれば、廃炉作業は一気に加速することも期待できる。
そのためにも急ぐべきは、放射線に耐えうる高性能ロボットや安全なデブリ回収方法など新技術の開発だろう。足下の厳しい現実を直視しつつ、東電と国は、より長期的な視点から内外の英知の結集に総力を挙げる必要がある。
第1原発の廃炉は、圧力容器を突き抜けたデブリを取り出すという、世界にも前例がない難事業への挑戦であることを忘れてはならない。