eストーカー被害の防止へ
- 2017.02.09
- 情勢/社会
公明新聞:2017年2月9日(木)付
加害者に専門治療促す
神奈川県警
神奈川県警察は昨年12月26日、ストーカー事案の加害者に専門医を紹介し、精神医学的治療を行う取り組みを本格スタートさせた。治療を担当するのは依存症を専門とする大石クリニック(横浜市中区)の大石雅之院長。昨年6月の定例会でストーカー加害者の更生を促す取り組みについて訴えていた公明党の亀井貴嗣県議がこのほど、県警の担当者や大石院長と意見交換した。
更生に向け、精神科医と連携
近年、ストーカーによる殺人事件が相次いでいる。県内では2012年11月、逗子市の自宅アパートで女性が元交際相手に殺害されるという痛ましい事件が発生。犯人の男は犯行直後、現場で自殺したことから、懲罰的な対応が抑止力にならないことが指摘されていた。さらに県内のストーカー事案の認知件数は14年以降、1000件を超えるなど高い水準で推移している。
このため県警は、ストーカー行為を繰り返す加害者を精神医学的な治療につなげる取り組みを始めた。具体的には、(1)県警が加害者の同意を得て、医師に加害者情報を提供する(2)治療が必要と医師が判断すれば、県警から加害者に受診を促す(3)その上で県警は医師から加害者の心理や対応などについて情報提供、助言を受ける―というもの。治療費の本人負担は、保険診療で行われるため低く抑えられる。
県警によると、昨年4月から12月までの試行運用では、ストーカー行為で口頭注意や警告などを受けた、ほぼ全ての加害者に声を掛けたが、治療につながったのは男女3人。いずれも通院を続けており、再犯には至っていないという。
県警の担当者は「加害者は〈相手が悪いんだ、自分は悪くない〉と思っている。家族にも協力してもらい、何度も説得してようやく通院に応じてくれる」と語った。
「日本にはストーカーを治療するという発想がなかった。ようやく病気だという認識が出てきたところで遅れている」と指摘するのは大石院長。「インターネットで探しても被害者対策ばかりだ。加害者に治療先があるんだということを、もっともっとアピールしなければいけない」と訴えた。
亀井県議は「ストーカーによる悲劇が二度と繰り返されないよう、加害者治療の啓発に取り組んでいく」と力を込めた。