e熊本地震10カ月 "みなし仮設"孤立防げ

  • 2017.02.14
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年2月14日(火)付



入居戸数は仮設の3倍
物資届かず情報もなし
熊本・益城町



熊本地震から10カ月。住まいの確保が進む中、仮設住宅に比べて、民間賃貸の「みなし仮設住宅」への支援が十分に行き届いていない現状が浮き彫りになっている。みなし仮設住宅で暮らす被災者の実態と、孤立防止へ奮闘する市民団体や行政の取り組みを追った。=熊本地震取材班


市民団体が見守り活動、マンパワー不足 課題に

今月6日夕。熊本県益城町内にあるアパートの一室を訪れると、小学4年生の女児と同級生が二人仲良く宿題に取り掛かっていた。

「早く終わらせないと、もうすぐご飯の時間よ」

こう優しく語り掛ける母親の園田舞子さん(35)は「(みなし仮設住宅に)移り住んで校区が変わり、身近に知り合いがいなくなった。こうして地元の友だちが遊びに来てくれることがうれしい」と目を細める。隣でうなずく祖母の福子さん(55)は「昨年5月の入居から今まで、仮設住宅のような支援や物資は何も届かず、情報すらない」と"支援格差"に不安を募らせる。「いずれ地元に帰りたい気持ちが強いので、近所付き合いにも気持ちが向かない」と複雑な心境を吐露した。

昨年12月28日現在、熊本県内のみなし仮設住宅の入居戸数は、仮設住宅の3倍近い約1万2000戸に上る。このうち約1400戸を数える益城町のみなし仮設住宅は、町内に約300戸、熊本市を中心に約1100戸が県内に分散している。

県内15市町村では現在、社会福祉協議会などが被災者の生活再建を総合的に支援する「地域支え合いセンター」を開設している。益城町は市民団体「こころをつなぐよか隊ネット」が町社協の委託で同センターを運営し、スタッフ18人で、みなし仮設住宅の見守り活動を展開している。

よか隊ネットの江崎太郎事務局長は「みなし仮設支援では個人情報保護法が壁。ボランティアなどの素早い支援の妨げになる場合もある」と指摘する。一方で、今後起こり得る大規模災害でも、みなし仮設の需要は高い。「だからこそ、こうした環境整備とともに、初めから見守り活動も含めた予算確保が欠かせない。マンパワー不足が大きな課題だ」と訴える。

よか隊ネットが昨年10月から12月末までに訪問した731戸のうち面談できたのは381戸。このうち約4割で健康悪化や生活困窮などが予想され、継続的な見守りが必要とみる。

昨年12月18日には、みなし仮設入居者の孤立を防ごうと町内で交流会を実施した。炊き出しや相談ブースなどには約400人の参加者が訪れたが、孤立しがちで外出困難な高齢者らは参加できていない課題も残る。

県は今月1日、点在するみなし仮設入居者の支援強化へ、関係市町村の相互協力を検討する会議を開催した。熊本地震から10カ月が経過した今、"取り残されかねない"被災者への支援の輪を広げる取り組みは、ようやく動き始めたばかりだ。

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