e子どもの貧困 地域から考える
- 2017.02.21
- 生活/子育ての補助金・助成金
公明新聞:2017年2月21日(火)付
民間の支援団体が主催 全国キャラバン in山形
子どもの貧困問題に取り組む公益財団法人「あすのば」が今月5日、山形市内で「子どもの貧困対策 全国キャラバンin山形」を開催した。これには、行政や民間団体が参加し、困窮の現状や課題をめぐり活発に意見を交換。また、東日本大震災の被災地で、生活に困難を抱える子どもや親を支援する先進事例も報告された。いかに地域で「子どもの貧困」を認識し、支えるべきか――。参加者の発言やワークショップから考える。(東北支局)
教育、親への支援が負の連鎖を断ち切る
イベントでは前半、行政や支援団体の代表による現状報告が行われた。
山形県子育て推進部子ども家庭課の齋藤邦仁課長補佐は、同県が昨年度から始めた「ひとり親資格取得応援プロジェクト」を説明。親が就職に有利な資格を取得する際、入学準備金の貸付や修学期間中の生活支援金、家賃補助を実施していることを説明し、「貧困問題の解決には、一つ一つの家庭に応じたきめ細かな対応が不可欠」と述べた。
同県ひとり親家庭応援センターの相談員・川又英子さんは、「教育環境が不十分だと次世代に"負の連鎖"が続く。子どもの学習支援は喫緊の課題だ」と指摘した。
また、子ども食堂「楽」を運営する山形てのひら支援ネットの西上紀江子会長は、「自分が何に困っているか表現できない小中学生が多い。子どもの話にじっくり耳を傾ける時間が重要」と言及。経済的問題を抱えた子どもの学習支援に取り組む山形大学の学生有志団体「学び場プラス」代表の安孫子知樹さんは、「親に余裕がなく家庭での会話が少ないからか、多弁な子どもが多い」と語った。
学力格差の原因は「学校外教育」に
集会では、被災地における先進的な子ども支援の事例も発表された。
東日本大震災の被災地では、親の死や失業によって生活困難に陥った家庭が少なくない。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの鈴木平シニアマネージャーは、「日本の学力格差は『学校外教育』の差から生まれる」と強調。個人や企業の寄付を集め、塾や習い事、体験活動など教育サービスに限定した「学校外教育バウチャー」を提供、さらに、大学生ボランティアが学習や進路相談に乗り、進学を支援している模様を紹介した。
NPO法人インクルいわての山屋理恵理事長は、運営する子ども食堂で子どもと一緒に食事を作っている様子に触れ、「子どもの生活習慣を整え、生活力をつけることが大切」と話した。
このほか、「高校の中退予防と中退後の支援策を実施」(NPO法人アスイク・大橋雄介代表理事)、「子どもたちの居場所と学習環境を提供」(NPO法人TEDIC・門馬優代表理事)といった活動が報告された。
官民で多様なサポートを
次いで、参加者は、グループに分かれ、子どもを支援する上で必要な人や団体などを付箋へ書き、模造紙に張り出すワークショップを行った。「この地域は大学がないので、大学生と交流できる場があるといい」「視野を広げるために職業体験できる環境が必要」などと、"わが街"における具体的な支援策を活発に議論し合った。
山形大学3年の梁瀬真理さんは、「一人一人の子どもたちの"背景"へ、地域の人が目を向けていけば、子どもの持つ力を伸ばすことができるのでは」と語っていた。このほか参加者からは、「地域に、子どもを支える資源がたくさんあることが分かった」「県、市町村、企業や民間団体の協働が欠かせない」との感想も寄せられた。
集会を終え、「あすのば」の小河光治代表理事は、昨年12月支給分から児童扶養手当の2人目以降の支給額が倍増したことや、返済不要の給付型奨学金が創設されたことについて「悲願だった施策が実現した。大きな一歩だ」と国の支援策を評価。さらに小河氏は経済的な支援に加え、「孤立したり、つらい思いを打ち明けられない人を見守り、温かく寄り添える社会をつくるために多様な形での支援が求められる」と語っていた。