e産後ケアで育児不安 軽く

  • 2017.02.22
  • 生活/子育ての補助金・助成金

公明新聞:2017年2月22日(水)付



うつ予防へ心身サポート



精神的に不安定になりがちな出産後の女性をサポートする「産後ケア」の取り組みが自治体で広がっている。政府は、その中心となる「子育て世代包括支援センター」(日本版ネウボラ)の充実を後押しするとともに、2017年度からは、産後うつによる自殺予防などを目的に産婦の健診費用への助成を始める。産後ケアの現状と課題を追った。


自治体 ママへの相談・指導 充実

子どもを抱き、真っ赤なバランスボールに腰掛けた母親が、講師の掛け声に合わせて一斉に弾む。母親の腕の中では、心地よい揺れに寝てしまう赤ちゃんも。参加した14人の母親は、まるで出産と育児で凝り固まった体を動かすかのように、楽しそうに汗を流していた。

これは1月下旬、東京都文京区が保健サービスセンター本郷支所で開いた「産後セルフケア教室」の一コマだ。生後2、3カ月の赤ちゃんと一緒に参加でき、母親の心身を整える狙いがある。保健師もその場に立ち会い、育児に関する相談を受け付ける。生後2カ月の長男を連れた母親(30)は、「子どもが生まれてから運動する機会が全くなかったので、リフレッシュできた」と笑顔を見せる。

同ケア教室は、妊娠から出産、育児まで切れ目なく支援する「文京区版ネウボラ事業」の一環。ネウボラとはフィンランド語で「助言の場」という意味だ。15年度からこの事業を導入する同区では、運動教室のほかに、授乳や沐浴など子育てに関する相談・指導、助産院と連携した宿泊型ショートステイなど、産後ケア事業に力を入れている。

公明党が一貫して進めてきたネウボラは、16年4月までに296市区町村720カ所で導入され、国は20年度末までの全国展開をめざす。ネウボラの取り組みの一つに位置付けられる「産後ケア事業」は、16年度で全国180の市区町村が実施しており、政府は17年度予算案に240自治体へと広げるための予算を計上している。

産後ケアの重要性について、厚生労働省は「出産直後の母親は孤立しがちで、産後うつを防ぐ上で大事な取り組み」(母子保健課)と指摘する。


厚労省 産婦の健診助成へ

厚労省によると、産婦の約1割は、育児への不安や重圧によって、不眠や意欲の低下といった症状の「産後うつ」を発症する。対応が遅れれば、育児放棄や虐待、そして自殺にさえつながる恐れもある。

かつて日本では、親と同居する世帯が多く、産後は親の協力を得ながらの子育てが可能だった。しかし、核家族化が進んだことで親から支援が受けられなかったり、晩婚化による出産年齢の高齢化で体調の回復が遅れ、不安を抱く女性が増えている。

このため国は、ネウボラなどでの産後ケア事業の拡大に取り組む。厚労省は17年度から、産婦のうつ予防や早期発見のため、健診費用への助成を始める。産後ケア事業を行う市区町村に対し、産後2週間や1カ月に行う健診費用2回分を助成する。1回につき5000円を上限に、国が費用の半分を負担する。母親の身体面や精神状態を把握し、産後の早期支援につなげる狙いがある。

また、国は、産後うつなどによる妊産婦の自殺対策にも乗り出す方針で、見直しが進む「自殺総合対策大綱」に妊産婦への支援を新たに盛り込む。


誰もが発症の可能性 総合的な母子支援を


文京学院大学 市川香織准教授

東京都などの調査によると、うつ病などで自殺した妊産婦は、05~14年の10年間に東京23区で63人に上った。出産数に占める割合は10万人当たり8.5人で、出血などによる妊産婦死亡率の約2倍に相当する。産後ケアは喫緊の課題だ。

産後は、体内のホルモンバランスの変化が大きく、情緒不安定になる。慣れない育児への不安や疲れ、周囲の理解不足も重なり、産後うつを誘発する。

このリスクは誰もが潜在的に抱えており、新米ママの皆さんは「私も発症する可能性がある」と認識しておくことが重要だ。

このため、誰もが産後ケアを受けられるよう、行政サービスの充実が欠かせない。各自治体での産後の総合的な母子支援の強化に向けて、子育て支援に熱心な公明党に期待している。

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