eユニバーサル社会の実現へ
- 2017.02.27
- 情勢/解説
公明新聞:2017年2月26日(日)付
2020年東京五輪・パラリンピックに向けて
対談
公明党障がい者福祉委員長(衆院議員) 高木美智代さん
社会福祉法人 プロップ・ステーション理事長 竹中ナミさん
2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、誰もが個性と能力を発揮できるユニバーサル社会の実現に期待が高まっています。チャレンジド(障がいのある人)の就労を支援する社会福祉法人「プロップ・ステーション」の竹中ナミ理事長と、公明党の高木美智代障がい者福祉委員長(衆院議員)に語ってもらいました。
個性や能力を発揮できる環境を 竹中
社会の側にある障壁を取り除く 高木
竹中 生まれた時から脳に重い障がいのある娘を通じ、さまざまな障がい者と出会いました。一般世間では、障がい者を「かわいそう」「気の毒」と思いがちですが、私はむしろ障がい者一人一人の中に、光る個性や能力があることを実感しました。
福祉施策は「弱者に何かをしてあげることではなく、弱者を、弱者でなくしていくプロセス」です。私たちが障がいのある人の可能性に着目し、チャレンジドという呼称を提唱する大きな理由がここにあります。
高木 障がい者が望み通りの人生を生きていくという、素晴らしい考えですね。「1億総活躍」といいますが、お互いに多様性を認め合い、さまざまな個性が共存し、全ての人の力を存分に生かす社会が重要です。
竹中 まさに、私たちがめざすユニバーサル社会の実現です。1991年に「プロップ・ステーション」を設立し、ICT(情報通信技術)を活用した障がい者の就労支援を行ってきました。多くのモデルケースをつくることで「障がいが重い人でも、このような働き方ができる。目が見えないけど、耳が聞こえないけど、自分にもできるかもしれない」と、当事者の意識変革につながっています。1人の障がい者を支援すれば、その後に続く100人、1000人を支援する道が開けます。
高木 ICTの発達により、障がい者の能力をより引き出しやすくなり、社会参加の促進や自己実現が期待できる時代になりました。
竹中 日本人は、障がい者に出会うと、「困っている事はありませんか?」と声を掛けることを学びます。しかし、「障がい者は、あなたと違うやり方で、もっとすごいことができるかもしれない」とは教わりません。この視点が抜けています。
だから、障がい者のイメージは、いつまでも「かわいそう」のままです。幼児教育の段階から啓発すれば、社会全体を変えることができると思います。
高木 ユニバーサル社会の実現に向けた最も大切な視点です。障がいという壁は、むしろ社会の側にあるからこそ、政治の役割で、この障壁を取り除いていきたい。
公明党の手厚い支援に感謝 竹中
世界一の先進都市・東京めざす 高木
竹中 この26年間、チャレンジドが納税者になれる社会をめざし、活動し続けてきました。公明党は、私たちの思いにいち早く共感し、障がい者福祉・就労の分野を手厚く支援してくれました。
高木 公明党は、2006年、国連で障がい者の社会参加などを進めるための権利条約が採択されたことを受け、多くの障がい者団体の声を聞きながら、障害者差別解消法など国内法の整備を主導してきました。10年で12本の法律が成立しています。
その結果、障がい者福祉の関連予算は、10年前の約2.4倍に当たる1兆2656億円に拡充。障がい者の一般就労は、約1.7倍の47万4000人に増加し、福祉的就労から一般就労への移行も、約9.3倍の1万2000人になるなど、障がい者の社会参加は大きく前進しています。
竹中 障がい者に限らず、働くことが難しいと思われている人たちが力を発揮できるようになることは、社会のダイナミックな転換です。女性でも高齢者でも、その人の力を生かすことは、希望につながります。
高木 夢を描けることは生きる力になります。文化芸術分野でも、絵画や陶芸など障がいのある人の作品が「アール・ブリュット」などと呼ばれ、欧米で高い評価を受けています。公明党は他党に呼び掛け、こうした障がい者の文化芸術活動を幅広く推進する法案を超党派でつくり、早期成立をめざしています。
竹中 20年に東京五輪・パラリンピックが開催されますが、ユニバーサル社会の実現に向けて大きな契機となるはずです。
高木 都議会公明党は、東京五輪・パラリンピックの"レガシー(遺産)"として、「人にやさしい街づくり」に取り組んでいます。例えば、都の17年度予算案には、鉄道駅のホームドア整備やエレベーターの設置といったバリアフリー化に関連する事業が盛り込まれ、16年度の74億円から130億円に増額されました。また、無料Wi―Fi(ワイファイ)も拡充し、視覚、聴覚障がい者が、外出先で音声や文字情報を得られやすくなる環境が整います。東京を世界一のバリアフリー先進都市にしていきます。
竹中 福祉を支えてきた公明党だからこそできると期待しています。東京から世界にモデルを発信できるよう、頑張っていただきたいです。
たけなか・なみ
神戸市生まれ。1991年、ICTを駆使してチャレンジドの就労を支援する草の根のグループ「プロップ・ステーション」を発足し、代表に就任。社会福祉法人格を取得した98年から現職。「ナミねぇ」のニックネームで知られる。