e准救急隊員の創設 過疎地域の人命救助向上に期待
- 2017.02.27
- 情勢/解説
公明新聞:2017年2月27日(月)付
過疎地域と離島を対象に、救急車の確実な出動を確保するため准救急隊員の制度が4月から創設される。
現在、救急車には救急隊員3人以上の乗務が義務付けられている。しかし、救急隊員を十分に確保できないため救急業務の"空白"が生じつつある。そこで救急隊員の編成を救急隊員2人と、救急隊員OBや一定の講習を受けた役場の職員を准救急隊員として派遣できるようにする。
新たに住民の命を預かる准救急隊員の使命感に応え、また、安心して業務に精励できるよう、国と地方自治体には万全の支援を求めたい。特に、講習のあり方や継続的な研修、職場における配慮、公務災害の補償が重要だ。過疎地域の人命救助向上に貢献できる制度にしてほしい。
准救急隊員は人工呼吸器を使った応急処置など危険性の高い処置を単独で行うことはできない。しかし、3人で行う担架搬送や、心肺蘇生法で行う心臓マッサージの連携などは実施できるよう教育・訓練される。制度運用の方法として、准救急隊員を職場や自宅から現場に直接向かわせ、救急車が到着するまで応急処置をさせることもできる。
消防庁によると、救急車出動件数は2010年から増え続け、15年は約605万件で過去最多を記録した。急病が約385万件でそれに続くのが一般負傷の約89万件だった。出動件数の増加した消防本部にその理由を複数回答で聞くと、高齢の傷病者の増加が約67%、急病の傷病者の増加が約66%に上り、現代社会の影響が強く出ている。
こうした傾向に過疎地域が対応するには相当な困難がある。実際、愛媛県西予市の一部地域では救急隊員を平日昼間しか配置できず、「救急隊員2人で軽症者の搬送をしたい」との考えを地方分権改革の提案募集の中で伝えていた。この声を受け政府は、救急隊員の編成基準見直しを15年12月に閣議決定し、今回の准救急隊員の創設につなげた。
救急隊員は、応急処置や症状を記録しながら傷病者を励まし、「踏み切りを通るので少し揺れます」との気遣いも忘れない。准救急隊員が傷病者に寄り添う救急業務を支える大事な一員になることを期待したい。