eガス小売り全面自由化 消費者の生活に役立ってこそ
- 2017.03.06
- 情勢/解説
公明新聞:2017年3月6日(月)付
都市ガスの小売り販売が4月から全面自由化される。事業者による価格やサービスの競争が、消費者の生活向上につながることを期待したい。
大口利用者向けをはじめ徐々に自由化されてきた都市ガス市場で、最後の規制緩和となるのが一般家庭などを対象にした小口販売だ。これまで消費者は、ガス事業法に基づいて地域ごとに決められた都市ガス会社としか契約できなかったが、今後は小売り事業者を選ぶことができる。
市場競争の活性化で消費者が期待するのは、ガス使用料金の引き下げだろう。既に値下げした大手ガス会社もあり自由化の効果が表れている。
サービス面の充実にも注目したい。例えば、携帯電話料金でおなじみのポイント制や定額制が導入されれば、消費者のライフスタイルに合わせた選択が可能になる。
注意すべきは便乗詐欺だ。ガス会社を乗り換える際の初期費用は、高くても数千円程度だが、高額な入会金を払えば格安でガスを利用できるとうたう悪質な手口も想定されている。政府は消費者が悪質業者を通報するための窓口を経済産業省に設けた。今後も注意喚起に努めてほしい。
ガス漏れなどの緊急時の対応はガスの導管を所有・管理するガス会社が責任を負うことや、小売り事業者が倒産してもガスの供給が止まることはないことなど、消費者が安心できる情報の周知も自由化の成功には不可欠だ。この点も政府、事業者が知恵を絞る必要があろう。
長期的な課題として検討すべきことは、都市ガスの燃料である液化天然ガス(LNG)の調達ではないか。東日本大震災以降の電力不足から、火力発電向けの輸入量が急増した。都市ガス事業者もLNGの確保戦略を進めるが在庫の不足感は否めず、調達価格も高止まり傾向にある。安定供給には調達先の多様化を進める必要があり、官民挙げての努力が重要だ。
都市ガスの導管が通る地域は東京などの都市部に多い。地方ではガスボンベでガスを供給するLPガスの利用が圧倒的に多数だが、LPガスは災害に強い半面、都市ガスより割高ともいわれる。地方の導管網整備も今後の課題として指摘しておきたい。