e踏切の安全対策 バリアフリーの視点も重要だ
- 2017.03.15
- 情勢/解説
公明新聞:2017年3月15日(水)付
先月、70代の女性が都内の踏切で電車にはねられて亡くなった。使っていた手押し車の車輪が路面と線路の隙間に挟まり転倒し、起き上がれなかった可能性があるという。
踏切事故による死亡者は全国で毎年約100人に上り、その4割は65歳以上の高齢者だ。痛ましい事故が繰り返されないよう安全対策を急がなければならない。
国土交通省は、事故や渋滞が起きる可能性の高い全国529カ所を「改良すべき踏切」として指定した。改正踏切道改良促進法(昨年4月施行)に基づくもので、昨年の58カ所に続き2度目となる。
指定を受けた踏切は、2020年度までに改良対策を実施することが鉄道会社と自治体に義務付けられる。踏切の利用者、とりわけ高齢者の視点から安全対策を強化してほしい。
最も有効な対策は、立体交差によって踏切を撤去することだが、工事にかかる費用や期間などの問題から対策が進まないケースが少なくない。こうしたハードルをどう乗り越えるか。
この点について改正法では、鉄道会社や自治体、地域住民の代表らによる協議会を設置し、そこに国も参画できるとしている。国には、立体交差化を対象にした融資制度などの支援策がある。資金面の問題は検討課題の柱であるだけに、協議を後押しする役割を国には期待したい。
地域に根差した公明議員の存在も重要だ。住民の多様な意見に耳を傾け、鉄道会社や自治体に対して具体的な政策提言や要望を行うことによって、対策を前に進めることができるのではないか。
立体交差化のほか、より低コストで可能な安全対策として、踏切内に障害物があることを感知して電車に知らせるセンサーの増設、踏切の歩道部分と車道部分をカラー舗装によって区別し、車と歩行者の接触を防ぐことなどが挙げられている。
既存設備についても見直すべき点はあろう。例えば、踏切に設置されている非常ボタンは車いすの人でも押せる位置にあるのか。踏切内に高齢者がつまずきやすい箇所はないか。バリアフリーの視点からも、踏切の安全対策に知恵を絞りたい。