e住宅ローン減税の特例など被災者支援を恒久化
- 2017.03.17
- 情勢/解説
公明新聞:2017年3月17日(金)付
国会で審議中の2017年度税制改正案には、災害税制の恒久化が盛り込まれている。これは、災害のたびに特例法を定めて実施してきた被災者に対する税制面での支援を常設化するもので、今後は新たな立法手続きが不要となる。被災者が生活再建にいち早く踏み出せるよう、災害対応の充実を求めていた公明党の訴えが実ったものだ。
2017年度税制改正案
災害時の対応が迅速に
公明が推進 負担和らげ、再建支える
住宅ローンを利用して自宅を購入すると、残高に応じて所得税額が控除される「住宅ローン減税」。適用を受けるには、居住していることが要件だ。しかし、2011年3月11日の東日本大震災では、自宅が倒壊したり、流されてしまったため、その要件を満たせなくなり、住宅ローン減税を受けられない被災者が続出した。
こうした住宅ローン減税に代表される被災者の税負担の問題を解決するため、公明党などの主張を踏まえ、各種の軽減措置を盛り込んだ特例法が震災から1カ月半後の4月27日に制定された。これにより、被災者は住宅ローン減税を継続して受けられることになった。さらにその後、新たな特例法の制定や毎年度の税制改正を通じ、特例措置は追加され、被災者の生活再建を後押ししてきた。
今回、恒久化された税制措置は多岐にわたるが、代表的なものは、前述の住宅ローン減税の特例だ。
また、サラリーマンが給与から一定額を天引きして住宅資金を積み立てる「財形住宅貯蓄」の特例も盛り込まれた。財形住宅貯蓄は利子を非課税にしているのが特徴で、住宅の建設・購入・リフォーム以外の目的で払い出しが行われた場合、5年間さかのぼって課税されるが、今後、災害を理由に払い出す場合は課税されなくなる。
これらは全ての災害に適用されるが、大規模災害ではさらに手厚い支援が適用される場合もある。例えば、その災害が、被災者に支援金を給付する「被災者生活再建支援法」の対象になれば、再取得した住宅に加え、被災した住宅にも住宅ローン減税が重複して適用される。
加えて再取得した住宅にかかる固定資産税と都市計画税については4年間、半減する。被災した自動車の自動車重量税も、廃車日から前の発災日にさかのぼって還付される。
このほか、事業者の再建を支援する税制措置も盛り込まれている。
税理士「備えが充実、希望になる」
■熊本地震も適用
政府が災害税制の恒久化に乗り出したのは、災害のたびに特例法を作って国会で審議していては、対応が後手に回りかねないと判断したからだ。そこで従来の特例措置を整理し、将来の災害に迅速に対応できるようにしたのだ。これは昨年4月の熊本地震にさかのぼって適用される。
今回の恒久化について期待を寄せてくれたのは、仙台市宮城野区に住む小松敬藏さん、美和子さん夫妻だ。仙台港に近い蒲生地域でクリーニング業を営んでいた夫妻の自宅兼店舗は、東日本大震災の津波で流された。途方に暮れる間もなく、生活再建に奔走する中、役所の事務的な対応に困惑したという。
小松夫妻は「きっと役所の人も、国や県から次々と新たな情報や指示が下りてきて、大変だったんだと思う」と述懐しつつ、支援策が恒久的な制度になれば「役所の対応を含め、事務手続きがスムーズになるのではないか」と語る。
一方、仙台市内で主に中小企業の経営相談に携わる税理士の竹石淳一さんも、震災直後に資金面で不安を抱える経営者が多かったことを踏まえ、「あらかじめ軽減措置が分かっていれば、私たちもすぐにアドバイスができる。災害税制の恒久化により、将来への備えが充実し、被災者の希望になる」と話す。