e地域医療 病院間の連携でサービス維持を
- 2017.03.23
- 情勢/解説
公明新聞:2017年3月23日(木)付
住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる「地域包括ケアシステム」。その構築に寄与することを期待したい。
複数の医療機関などが連携して一般社団法人を創設し、地域の実情に応じた医療サービスの提供や病院経営の効率化をめざす「地域医療連携推進法人」制度が来月からスタートする。一昨年に成立した改正医療法に基づくもので、複数の市町村で構成される2次医療圏を対象にしている。
急速な少子高齢化に伴い、地域医療は深刻な課題に直面している。「人口が減少する中、同じ診療科の医療機関が複数あり共倒れの可能性がある」「主に高齢者が利用する長期のリハビリに対応した病院が少ない」といったケースは珍しくない。
こうした課題をどう乗り越え、質の高い医療を維持していくか。その手だての一つとして、医療機関の連携に着目した今回の新制度を評価したい。実際、多くのメリットが想定されているからだ。
例えば、医療機関ごとに「急性期」「回復期」などの役割を振り分けることで併存が可能になる。備品や薬剤などを一括購入すれば大幅な値引きが期待できよう。患者情報の共有もスムーズになるに違いない。
厚生労働省によると、既に検討が進んでいるケースが10件ほどある。岡山大学病院(岡山市)など市内6病院による「岡山大学メディカルセンター構想」もその一つで、若い医師を育てて医師不足に悩む県北部の病院に派遣するという。地域特有の課題を解決するために新制度を活用する姿勢は重要だ。
課題も指摘しておきたい。新型法人が、医療機関などの参加法人をどう取りまとめていくのか舵取りが難しいとされる。まずは医薬品の共同購入など比較的連携しやすい取り組みからスタートし、診療科の再編といった深い連携へと発展させるという視点も必要ではないか。
よりきめ細かなサービスを提供するためには、日ごろから住民の相談や要望を受け、必要に応じて新型法人のサービスにつなげる相談支援事業を充実する必要もあるだろう。国は、新型法人の運営状況を見ながら適切に後押ししてもらいたい。