e日欧のEPA 自由貿易のメリット発信したい
- 2017.03.27
- 情勢/国際
公明新聞:2017年3月25日(土)付
国が製品の輸出入に制限を加えず、自由な取引を可能にさせる自由貿易。自国と貿易相手国の双方にメリットがあることを英国の経済学者、デビッド・リカードが19世紀に証明して以降、現在に至るまで世界の繁栄を支える礎として重視され続けている。
日本と欧州連合(EU)は21日、経済連携協定(EPA)の妥結に向けた交渉を加速し、年内にも大枠で合意することで一致した。自由で開かれた貿易が重要であるというメッセージを改めて世界に発信した意義は大きいと言えよう。
関税の削減や撤廃について定める自由貿易協定(FTA)をさらに一歩進めて、投資や知的財産の保護なども含む幅広い分野での経済協力のルールを確立し、自由貿易を促進するのがEPAである。
しかし世界は今、他国の輸入品に高率の関税を課すなどして、自国の産業を守ろうとする保護主義の動きが勢いを増している。
米国では、トランプ大統領が「米国第一」を掲げ、自国の利益に重点を置き、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱と、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を決めた。欧州各国でも、国境を越えた人の自由な移動を認めるEUからの離脱を訴える極右政党の主張が、「移民に雇用を奪われている」との不満を持つ国民の心に響いている。
台頭する保護主義にどう対応すべきか。
日本政府は米国の立場を尊重する一方で、自由貿易が米国にとっても利益となることを、粘り強く説得したいと考えている。EUも、英国に続く加盟国の離脱を何としても防ぎたい。
そのためには、日本とEUがEPA交渉の成果を示す必要がある。もし合意に至れば、全世界の貿易額の約35%を占める巨大な経済圏の誕生となるからだ。
日本とEUのEPA交渉は2013年から始まったが、関税の引き下げや撤廃に関する主張で折り合えず、交渉が長引いている。だが、交渉をこれ以上停滞させれば、自由貿易の価値を国際社会にアピールするチャンスを自ら手放すことにもなりかねない。この点を肝に銘じ、年内中の合意をめざすべきである。