e避難指示解除 福島再生への確かな一歩に

  • 2017.03.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年3月27日(月)付



福島再生に向けた確かな一歩としなければならない。より大胆かつ、きめ細かな支援を今こそ政府に求めたい。

東日本大震災から6年余、東京電力福島第1原発事故による避難指示が、今月31日に福島県浪江、川俣両町と飯舘村で、翌4月1日に富岡町で相次ぎ解除される。

対象区域はいずれも、放射線量が比較的低い「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」。これにより両区域の避難指示はほぼ全て解除され、避難区域は線量の高い「帰還困難区域」を残すだけとなる。面積で見ても、当初の3分の1にまで縮小する。

ただ、避難指示解除がそのまま、住民帰還につながるわけでないことは、これまでに解除された5市町村の住民帰還率に明らかだ。対象区域が狭い田村市の72%以外は、葛尾村9%、楢葉町11%、南相馬市14%、川内村21%と軒並み1~2割にとどまっている。

背景にあるのは、放射線への不安に加えて、買い物や医療、教育などの生活インフラが乏しいことだ。復興庁の調査でも、多くの人が「生活環境の未整備」や「働く場がない」ことなどを「戻らない」理由に挙げている。

避難指示がせっかく解除されても、住民が戻らなければ故郷再生はおぼつかない。財政面にも深刻な影響が出て、「自治体消滅」という事態を招く恐れすらある。「町残し」といった言葉が、逆説的な意味合いも込めて原発周辺市町村で囁かれているゆえんだ。

無論、避難先に定着して帰還を断念した人たちを責めるのはお門違いだ。重要なことは、「戻りたい人」たちのニーズに応え、「普通の暮らし」を取り戻せる環境を一日も早く築くことに尽きよう。

このために、富岡町は解除に合わせて複合商業施設をオープンし、浪江町は町営診療所を開設する。川俣町や飯舘村も新しい商業施設を夏までに完成させる予定だ。政府も帰還困難区域の再生に向け、「特定復興再生拠点」を設ける方針を明らかにしている。

こうした取り組みをどう住民帰還に結びつけるか。知恵と工夫と、そして避難住民が等しく抱く故郷への思いを汲んだ支援が、国と自治体に一層強く求められていることを重ねて強調しておきたい。

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