e英のEU離脱交渉 建設的な議論めざす努力を

  • 2017.03.31
  • 情勢/国際

公明新聞:2017年3月31日(金)付



欧州連合(EU)から初めて離脱国が出るという前例のない交渉が始まる。それも世界5位の経済規模を誇り、多国籍企業が多く集まる英国だ。わが国はもちろん世界中が交渉の行方を注視している。

英国のメイ首相は29日、EUに対して離脱することを正式に通知した。原則2年間の離脱交渉が近くスタートし、順調に進めば2019年3月に英国はEUを脱退する見込みだ。ただ、交渉は難航が予想される。

英国は離脱に際して、関税なしで自由に貿易ができるEU単一市場からも撤退する方針のため、早急にEUとの新たな自由貿易協定(FTA)の交渉に入りたい考えだ。しかしEU側は、英国が拠出を承認した総額約600億ユーロ(約7兆2000億円)とされるEU予算の支払いが先だと譲らない。交渉の入り口段階から激しく対立する構図に問題の深刻さが伝わってくる。

仮にFTAを締結できないまま英国が離脱すれば、関税や通関手続きが復活する。EUを最大の貿易相手とする英国にとって計り知れない打撃が予想される。自国経済を守るために英国は強気で交渉に臨まざるを得ない。

4カ国で構成する連合国という特徴から、世論が一枚岩でないことも背景にありそうだ。実際、EU残留支持者が多い北部スコットランドの議会は、EU離脱前に英国からの独立について住民投票の再実施をめざす方針を賛成多数で可決している。英国政府は、EU離脱による成果を反対派に示す必要に迫られている。

EU側も「結束」という点で不安を抱える。他の加盟国が英国に続く「離脱ドミノ」の懸念が指摘されているからだ。反EUを掲げる政党がドイツやフランスなどで勢力を伸ばしているだけに、離脱交渉の結果次第ではEUの結束が揺らぐ可能性がある。

ただ、英国のメイ首相がEUのトゥスク大統領に送った離脱通知の書簡の内容が、これまでの強硬姿勢より和らいだとの見方が出ている。歩み寄りの姿勢を示したものであれば歓迎すべきであろう。

まずは交渉の道筋を早期に示すことを英国、EUの双方に強く望みたい。その上で建設的な議論が進むことを国際社会は期待している。

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