e科学研究失速 科技立国へ政策的援助拡充を

  • 2017.04.03
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年4月3日(月)付



いささか気になる特集が先月23日付の英科学誌「ネイチャー」最新号に掲載された。

いわく、「この10年、日本の科学研究は失速しており、科学界のエリートとしての地位が脅かされている」―。

数十年前、日本の科学力の躍進ぶりを絶賛した論調から一転、激しい国際競争の中で低迷する日本の科学界の現状に警鐘を鳴らしている。

資源が乏しい日本にとって、科学技術の振興が決定的に重要なことは言うまでもあるまい。その取り組みは国内経済の成長に直結するだけでなく、広く全世界に貢献し、わが国の国際的地位も高める。「科学技術立国」こそは戦後日本が掲げ続けてきた、いわば国是と言っていいだろう。

その科学研究の前途に翳りが出ているとすれば、由々しき事態と言わねばなるまい。大学など研究機関への政策的援助をどう拡充するか。ネイチャーの指摘を機に、政府は問い直す必要がありそうだ。

特集は、世界の主要科学誌に占める日本の論文の掲載比率を分析。この5年間で6%下落し、絶対数も激減していることを伝えている。

失速の要因は、「世界各国が科学技術予算を増大させてきた中、日本では2001年以降、研究開発への投資が横ばいである」ことだ。国公立大学への交付金削減で、若手研究者が厳しい環境に置かれていることも挙げている。

こうした指摘は既に関係者の間で把握されており、政府も「科学技術イノベーション」を成長戦略の重要な柱と位置づけ、16年度からの5年間で科技関係予算を計26兆円にする基本計画を掲げる。

ただ、それでも今年度の科技予算総額は3.5兆円。前年度当初比1%増で、このペースでは基本計画の達成はおぼつかない。主要国の伸び率(名目額)と比べても、00年を1とした場合、ドイツ1.6、中国11.2、韓国4.7などであるのに対し、日本は1.1にとどまっている。

もとより、財政事情は厳しく、科技予算だけを聖域化するわけにはいかない。そんな中、実効性ある「科学への投資」をどう確保、拡充するか。政府、大学、企業などが一体となって、「科技立国・日本」の地位を死守する体制づくりを急いでもらいたい。

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