e走り始めた燃料電池バス
- 2017.04.07
- 情勢/テクノロジー
公明新聞:2017年4月7日(金)付
都内の営業路線に導入
水素社会の先導役に期待
東京都は3月21日から、次世代エネルギーとして注目されている水素を燃料に使った「燃料電池バス」の営業運転を始めている。走行時に二酸化炭素(CO2)を排出せず、環境に優しい燃料電池車の路線バスへの導入は全国初の試み。走り始めた燃料電池バスが水素社会実現への先導役として、期待が高まっている。
「静かで、快適な乗り心地」
都、東京五輪へ100台めざす
「振動が少なく、加速もスムーズ。快適な乗り心地でした」。東京駅前で燃料電池バスから降りてきた60代の男性は、笑みを浮かべて感想を語ってくれた。
都が導入した燃料電池バスは、水素と空気中の酸素を化学反応させて発電し、モーターを動かして走行する。エンジンではなくモーターで走るだけあって、走行音は極めて静かだ。
現在、都は2台の燃料電池バスを運行。区間は、東京ビッグサイト(江東区)と東京駅丸の内南口を結ぶ約8.4キロで、平日8往復、土日祝日は9往復する。水素を満タンに充塡すると約200キロの走行が可能で、「充塡は1日に1回程度で済む」(都交通局広報担当)という。
またバスには、大容量の外部電源供給システムを搭載している。一般家庭1カ月分の消費電力に相当する、235キロワット時の電力供給能力を備えており、災害時などに電源車としての活用も期待される。例えば、避難所となる学校体育館の場合、規模にもよるが、バス1台で3日分の電力を供給できるという。
都は、水素社会の実現へ、2020年東京五輪・パラリンピックを契機に水素エネルギーの普及・拡大をめざしている。今回の燃料電池バスの導入は、その一環。都は20年までに、バス全体で100台、都バスで70台の導入をめざしている。
車両と燃料供給 普及へ環境整備急ぐ
メリットの多い燃料電池バスだが、普及に向けての課題は大きく二つある。
1点目は、車両の価格だ。バスは1台当たり約1億円で、街でよく見かけるディーゼルエンジンのバスの約5倍もかかる。民間バス会社にとっては足かせとなりそうだが、都は国の補助(車体価格の3分の1)と都の補助(最大3000万円)によって、導入を促す方針。
また、2点目は、燃料の水素を供給する水素ステーションの整備だ。都内には現在、12カ所の水素ステーションがあるが、都は20年までに35カ所に増やしたい考えだ。このため、都は17年度予算に、同ステーションの整備費と運営費の補助に約30億円を計上している。バス路線の沿線で整備が進むよう、民間事業者に働き掛けていく。
燃料電池バスは1台で、燃料電池乗用車45台分の水素を消費する。決まったルートを毎日運行するバスは、水素を安定的かつ大量に消費するため、都次世代エネルギー推進課の堀哲課長は、「ステーションの安定した運営につながる」と語る。
燃料電池バスと水素ステーションの双方が、歩調を合わせて整備できるかどうかが、普及促進への一つのカギとなる。
都議会公明党が提案
政府は水素社会の実現に向けて、16年3月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」改訂版を策定し、新たな目標に向け具体化に取り組んでいる。
例えば、今年4月1日時点で全国90カ所ある水素ステーションについて、20年度までに160カ所、25年度までに320カ所とする整備目標を掲げている。経済産業省はこのため、17年度予算で45億円を計上している。
公明党はこれまで、燃料電池自動車の普及や同ステーションの拡大などに力を入れてきた。東京都においては、都議会公明党の大松あきら都議(都議選予定候補=北区)、まつば多美子都議(同=杉並区)らが議会質問などを通じて、都バスなどへの導入を提案。また、15年7月に行われた試乗会にも議員団が参加し、走行性能や乗り心地を確認するなど、水素社会の実現へ全力を挙げている。