eAYA世代 若いがん患者を支えよう
- 2017.04.13
- 情勢/社会
公明新聞:2017年4月13日(木)付
若い時にがんを発症した「AYA(アヤ)世代」と呼ばれる患者を支える取り組みが急がれている。がん患者全体に占める割合は少ないが、多感な青春時代を過ごす中で、就職や結婚、出産という人生の節目に際して、他の世代と異なる悩みを抱えている。現状と支援策、公明党の取り組みについて紹介する。
「仕事、結婚どうすれば...」 相談の機会少なく 悩み抱える
苦労を分かち合う交流会が支えに
「顔のどこから手術するんだろう。傷を見て友達は何と言うかな。内心、ギョッとするはず。でも絶対に生きたい!」――。
横浜市在住の多和田奈津子さん(44)は1988年、高校1年生の秋に甲状腺がんを発症、20代では悪性リンパ腫と、2度のがんを経験している。10代から病気の苦しみだけでなく、治療方法や再発への不安、仕事や結婚の悩みと葛藤しながら、一つ一つ乗り越えてきた。
多和田さんは当時を振り返り、「AYA世代のがん患者に、病院内で出会うことはほとんどありません。私も常に孤独を感じていました」と強調する。
AYAとは、思春期(Adolescent)と若年成人(Young Adult)を合わせた略語で、主に15歳から39歳までをいう。このAYA世代のがん患者は全国で約2万人。がん患者全体に占める割合は約2.5%にすぎない。同世代の患者と出会うこと自体が難しいのだ。
こうした中、多和田さんは、自身の経験を生かそうと、2014年10月に若年がん患者会「ローズマリー」を設立した。AYA世代のがん経験者がお互いの苦労を知り、共に将来を考えていく場として、定期的に交流会を開催している。これまでの参加者は延べ約110人に上る。
交流会では「友達にどう伝え、付き合っていけばいいのか」「結婚をして、子どもを産み、幸せな家庭を築けるのだろうか」「仕事を辞めたくない。どうすれば続けられるのか」など、参加者から深刻な悩みが吐露される。
多和田さんは「若い患者たちは、そもそも自分の気持ちを正直に打ち明けたり、表現する機会が少ない。とにかく話を聞き、悩みを分かち合うことが、人生を前向きに歩んでいくきっかけになります」と述べ、患者同士が結び付くことの重要性を訴える。
多職種協働チームの育成など――17年度 国の支援が本格化
AYA世代は小児から成人への移行期に当たるため、罹患するがんの種類も多岐にわたる。25歳未満では小児に多い白血病や悪性リンパ腫、脳腫瘍などの希少がんがみられ、25歳以上になると、子宮頸がんや乳がん、大腸がんなど成人に多い、がんが増える。
また、AYA世代の場合、小児がん経験者が後に他の部位で再発したり、発症時の治療による合併症が数年後に現れることもあり、継続的な診察と検査が必要となる。しかし、AYA世代の治療経験を持つ医療機関や医師は少なく、他の世代に比べて治療法の研究も遅れがちだ。
こうした現状を踏まえ、国は15年12月に発表した「がん対策加速化プラン」に、小児・AYA世代のがん対策を盛り込んだ。17年度からは、小児・AYA世代のがん患者を長期的に支えていくための体制整備に乗り出す。医師や看護師、医療ソーシャルワーカーらでつくる「多職種協働チーム」を育成。医療面だけでなく、AYA世代が抱える就学や就労など、自立に向けた悩みについての相談・支援などトータルケアをめざしていく。また、現在、AYA世代に関する実態調査も行われている。
さらに、今夏にも策定される国の第3期がん対策推進基本計画にも、初めてAYA世代のがん患者支援が明記される見通しで、国の本格的な取り組みが期待されている。
都議会公明党も提案
公明党のがん対策推進本部は15年8月、政府に対し、小児・AYA世代の患者の治療・相談支援の充実を提案し、がん対策加速化プランに反映させるなど、国の対策をリードしてきた。
一方、東京都では、都議会公明党の遠藤守議員(都議選予定候補=大田区)が17年3月2日の都議会定例会で、AYA世代のがん患者支援について質問。終末期における在宅療養の助成事業などの必要性を強く求めた。
これに対し、都側は「支援のあり方を検討する」と前向きに応じた。今後、都においても相談支援や緩和ケア提供体制などを含めた総合的な対策が検討されていく。