e東京の「隣組」制度に注目

  • 2017.04.20
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年4月20日(木)付



地域の防災力を強化
消火訓練 情報提供 見守り...
自助・共助活動に広がり



東京都は、公明党の推進で首都直下地震などに備え、地域の防災力強化に力を入れている。2012年からは毎年、町会や自治会など意欲的に防災活動を続ける団体を「東京防災隣組」として認定し、活動内容を広く紹介している。注目を集める品川区や目黒区での活動を紹介するとともに、識者に話を聞いた。

「消火訓練を続けて42年になります。おかげさまで今でも足腰が元気です」と笑顔で語るのは、東京都品川区戸越四丁目に住む渡辺豪さん(75)。渡辺さんは、1975年に結成された自主防災組織「戸越四丁目消火隊」の草創メンバーの一人で、現在、隊長を務める。

同消火隊は結成以来、毎月第4日曜日、小学校の校庭で初期消火訓練を実施。火災現場に、人力で運ぶ「可搬消防ポンプ」の点検や整備、放水を行う。これまでの訓練回数は通算で約500回に及ぶ。

結成のきっかけは地域の住宅事情にある。約1100世帯が住む戸越四丁目町会は、宮前商店街の路地から足を一歩踏み入れると、密集した木造家屋が広がる。幸い、これまで大きな火事に見舞われたことはないが、危機感を募らせた住民有志が立ち上がり、都に掛け合い、可搬消防ポンプを配置してもらうと同時に、消火隊が結成された。

近年では、消火訓練だけでなく、夏恒例のイベントで放水体験を行ったり、民生委員と連携した地域の高齢者の見守り活動を行うなど、活動の幅を広げている。こうした取り組みが評価され、16年に「東京防災隣組」に認定された。渡辺さんは「消火隊の活動を次の世代にも伝えていきたい」と意気込む。

「東京防災隣組」は、今年3月末に34団体が新たに加わり、計246団体となった。都の担当者は「防災隣組の認定により、普段、町会の防災活動に参加できない住民に自助・共助の重要性を知ってもらう機会になれば」と語る。

隣組に選ばれ、地域の防災対策が充実した事例もある。東京都目黒区の自由が丘商店街振興組合(会員数約1300軒)は、災害発生時、連絡がつながりにくくなる通信手段を確保するため、無線通信LANシステムを導入。商店街の来訪者に最新の災害情報を提供する体制が評価され、13年に認定された。同振興組合の中山雄次郎事務長は「認定されてから、店主らが大規模災害の発生を想定し、来訪者と住民の避難経路を確認するマップを作成したり、広域避難場所の確認など、商店街全体で災害時の対応を具体的に検討する契機にもなった」と語る。


都、町会に専門家派遣へ


公明 自主防災組織を全力支援

都は17年度予算に、地域防災力を高めるため、新たな事業を盛り込んだ。

具体的には、町会や自治会などの自主防災組織を対象に、防災の専門家を派遣し、防災活動に取り組む際の地域の課題などについて具体的なアドバイスを送る。また、全国から自主防災組織の優良活動事例などをまとめた冊子「サポートガイド」を作成。女性の防災リーダーを育成するため、防災シンポジウムやセミナーなども行う予定だ。

このほか、女性の視点に立った「防災ブック」の作成について、都議会公明党の提案を基に同予算に盛り込まれた。

これまで公明党は、地域で住民の命を守る共助の仕組みづくりを進めるため、都議会でも先頭に立って「防災隣組」などの自主防災組織の結成と育成支援を全力で訴えてきた。


コミュニティー再生に効果


東京大学大学院総合防災情報研究センター特任教授  片田敏孝氏

東京防災隣組の意義や、都市部の防災における自助・共助の取り組みについて、東京大学大学院総合防災情報研究センターの片田敏孝特任教授に話を聞いた。

江戸期の東京は、木造家屋が密集し「火事とけんかは江戸の華」と言われるほど、大火事が多く、地域住民が協力して初期消火に当たってきた。ある意味、消火活動がコミュニティーの維持につながっていた。

地域住民が災害を共通の"敵"と捉えて、食料備蓄や避難行動などを考えることは、単なる防災にとどまらず、認知症高齢者の見守りなど、地域の安全・安心につながる活動を展開しやすい環境にもなる。地域の自主防災組織が都の防災隣組として認定されることで、より活動の充実が図られ、コミュニティー再生に大きな効果を生むことを期待している。

公明党は、各地域で防災セミナーを開くなど、地域防災力の向上に熱心に取り組んでいる。地域をよく知っている女性が防災活動に携わることで、きめ細かな対策が講じられ、コミュニティーの再生がよりスムーズに進む。今後も、地域の草の根レベルからの防災対策に着目し、継続的な取り組みと応援をお願いしたい。

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