e高齢者の服薬 多剤併用の弊害 どう防ぐか

  • 2017.04.24
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年4月22日(土)付



"多すぎる薬"という問題に厚生労働省が本腰を入れて取り組み始めた。

複数の種類の薬を処方された高齢者が、副作用によって体調を崩すケースが相次いでいる。このため、医師や薬剤師などによる厚労省の有識者会議が検討を開始した。

多くの薬を日常的に服用している高齢者は珍しくない。実態把握に努め、的確な対策につなげてほしい。

厚労省によると、高血圧症や糖尿病など二つ以上の慢性疾患を抱える高齢者には、平均で約6種類の薬が処方されている。一方、処方薬が6種類以上になると「ふらつき・転倒」「物忘れ」などの副作用を起こす割合が特に増加するとの研究もある。重症化すれば、命に危険が及びかねない。

加齢により体内で薬を分解する働きが低下することも、副作用が増える原因の一つとされる。服薬数が多いほど飲み間違えや飲み忘れの可能性も高くなる。認知機能が低下してくればなおさらだ。

こうした「多剤併用」による健康被害をどう防ぐか。

参考になるのが、日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」だ。多剤併用に関して慎重な投与が必要な薬のリストをまとめている。厚労省も16年度の診療報酬改定で、医療機関に対し不必要な薬を減らせば診療報酬が加算される仕組みを導入している。

ただ効果はまだ十分ではないようだ。実際、有識者会議でも、複数の診療科から同じ効果の薬を別々に処方されたり、効き目が感じられない薬を処方され続けたという事例が報告された。

こうした現状を踏まえれば、副作用の実態のさらなる把握に加え、医薬機関への情報提供のあり方や医師と薬剤師の連携強化、かかりつけ医の活用による処方薬の一括管理などを有識者会議の主な論点としていることは妥当といえよう。厚労省は多剤併用の弊害を防ぐための指針を18年度末までに策定する方針だ。

当面、行政や医療機関は意識啓発を強めるべきだ。「複数の病院を受診する際は他に使っている薬を伝える」「お薬手帳は1冊にまとめる」「自己判断で薬を中断しない」など、薬との正しい付き合い方の周知徹底が欠かせない。

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