eコラム「北斗七星」

  • 2017.04.26
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年4月26日(水)付



「妖怪が出没するという荒れ果てた家」。広辞苑にある、お化け屋敷の説明だ。日本では決まって、お化け屋敷が話題に上る。ところが、関心を寄せているのは国内ばかりではない◆映画会社「松竹」がプロデュースし、中国・上海に今月15日から2カ月間限定でオープンした「呪鈴 少女すず子の棲む家」。昨年に続き、日本のお化け屋敷が"輸出"されたのだ。初日には、開場を待つ若者ら60人が行列。2時間待ちの日もあると聞く◆何せ、すず子は怖い。設定は50年ほど前の日本のある山村。崩れた空き家から聞こえる赤ん坊の泣き声に怖がり、誰も近づかない。立ち寄った人が姿を消すなど、事件も度重なる。意を決し村人たちが訪ねると、すず子は鬼のような形相で人肉を口に。すず子に眼球はなかった◆身の毛もよだつストーリーに惹かれるのは各国共通か。松竹事業推進室の山下元マネージャーによれば、「台湾やシンガポールも興味を示している」という。ちなみに、好調な滑り出しの上海のお化け屋敷は集客目標の3万人をクリアできる見通しだ◆世界が注目する日本の「カワイイ」文化。それに「コワイ」が将来加わるとは、『国際報道』(NHK)での指摘だ。「砂かけ婆」や「置いてけ堀」など、日本の妖怪には行為に注意を促す意味合いも。行いを省み、恐れる文化を忘れた社会は危うい。(田)

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