e復興相交代 被災地の声なき声に耳傾けよ
- 2017.05.08
- 情勢/解説
公明新聞:2017年5月1日(月)付
「最後の一人まで支援を継続する」―。就任早々、被災地で語ったその言や、よし。その決意のままに、徹して被災者に寄り添う復興行政のトップであってもらいたい。
東日本大震災の被害に関して、「まだ東北でよかった」などと語った責任を取って辞任した今村雅弘・前復興相の後任に、吉野正芳氏が起用された。緊張感を持ってその任に当たってほしい。
それにしても今村氏の暴言の数々には、いまさらながら強い憤りを禁じ得ない。震災の悲しみを胸にしまい、復興に向けて歩む被災者をどれほど傷つけたことか。現地にはいまも、「東北をばかにするな」との声が渦巻いている。
3.11から6年余り。インフラの復興は着実に進んでいるとはいえ、いまだ約3万1000人がプレハブ仮設住宅に身を寄せるなど、被災地の重い現実に変わりはない。
福島県ではこの春、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が4町村で解除されたものの、故郷に帰る人、すぐには戻れない人、避難先から見守る人―とさまざまだ。
解除地域の一つ、富岡町に希望に燃えて帰町した夫妻も「近所にほとんど人がいないし、夜は真っ暗で怖い」「本当にここで暮らしていけるのか」と揺れる心情を漏らす。
一方、放射線量の影響で帰郷のメドが立たない人も多い。今国会で審議中の福島復興再生特別措置法改正案には、帰還困難区域内に居住可能な復興拠点を整備することなどが盛り込まれており、早期成立が待たれる。対策の遅滞は許されない。
もとより、安倍内閣は「全閣僚が復興相」との合言葉で、復興加速を最重要課題に掲げてきたはずだ。もう一度、初心に立ち返ってほしい。
一つ提案がある。ともすると、政府の視察行程は、復興が前進する"光"の側面に終始するきらいがある。そのこと自体を批判するつもりはない。ただ、現場にはいまも、課題解決への光明が見いだせない"影"の部分も少なくない。被災地出身の吉野復興相はぜひ、大変な場所にこそ足を運び、声なき声に耳を傾け続けてもらいたい。
そうであれば、被災者に寄り添う心を夢にも忘れないはずである。