eコラム「北斗七星」
- 2017.05.08
- 情勢/社会
公明新聞:2017年5月3日(水)付
きょう何を食べたのか、思い出せないのは物忘れ。食べたこと自体を覚えていなければ、認知症の疑いがある。脳や体の病気から記憶や判断が鈍り、社会生活が困難になる認知症について、どれほど正しく理解しているだろうか◆4月下旬、京都市で4日間開催された認知症の国際会議。5年前に若年性認知症と診断された40代前半の男性が15分間スピーチし、「周囲の環境さえ良ければ笑顔で過ごすことができる」と訴えた。男性は周囲の理解を得て働き、講演活動も行う。「できることを楽しむ」「全国の仲間は皆、輝いている」とも語った◆国内開催2回目となった今回、78カ国から研究者や支援者ら4000人が集まった。認知症の人の参加は初めて200人を数えた◆世界では今、3秒に1人の割合で認知症の人が増えている。20年後には現在の2倍、2050年には1億3150万人との推計もある。今世紀における健康上の最重要課題と言ってもいい。進行を遅らせたり、若年性認知症の発症自体を防ぐための最新共同研究も報告された◆重い例を除き、認知症になると「何も分からなくなる」は偏見である。施策も介護する側にばかり目がいきがち。当事者が尊厳を持ち、安心して暮らしていける視点が欠けてはいまいか。誰もが認知症になる可能性はあるのだから。(広)