eボランティアが五輪成功の力に
- 2017.05.08
- 情勢/社会
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公明新聞：2017年5月4日（木）付
9万人以上の参加必要
募集開始は18年夏ごろ 大会運営や観光案内
組織委・東京都
2020年の東京五輪・パラリンピック成功のためには、大会運営などに多数のボランティアの協力が欠かせない。そこで、大会組織委員会と都の準備状況や関連団体の動きを追った。
「近年のオリンピック・パラリンピックは、ボランティア抜きに語れません」。こう話すのは、都オリンピック・パラリンピック準備局の下出享克・運営担当課長だ。
実際、12年のロンドン大会では約7万8000人、16年のリオ大会では約5万人ものボランティアが参加し、大会の成功を支えた。特にロンドンでは、大会後、ボランティアに対する意識が高まり、開催から1年の間に市民の約7割の人が何らかのボランティアに参加したとされ、五輪のレガシー（遺産）となった。
東京五輪においても多数のボランティアの協力が不可欠となることから、大会組織委員会と都は昨年12月、「東京2020大会に向けたボランティア戦略」を策定した。同戦略によれば、ボランティアは大きく2種類あり、組織委員会が募集し、大会運営を支える「大会ボランティア」と、都が募集し、国内外旅行者に対する交通・観光案内などを行う「都市ボランティア」の合計で9万人以上が必要になると見込んでいる【表参照】。募集は18年夏ごろに始める予定だ。
しかし、国内開催のスポーツ大会では過去に例のない数のボランティアを募るだけに、参加への雰囲気づくりや環境整備が課題となっている。
内閣府が国民5000人を対象に行った調査によれば、約6割がボランティア活動自体に関心があるものの、実際に活動経験のある人は4人に1人程度にとどまった。参加の妨げとなる要因を聞くと「参加する時間がない」との回答が過半数を占め、対応が急がれている。
今年1月に開かれた、都主催のボランティア・シンポジウムでも、小池百合子知事は「子育て中の方や働いている方、学生、障がいの有無にかかわらず、多くの皆さんに参加してもらえる環境を整えたい」と意気込みを語っている。
情報発信のサイト開設
休暇導入企業に助成金
都は、ボランティアに対する都民の参加機運を高めようと、環境整備を進めている。
例えば、ボランティアの魅力や情報を発信するウェブサイト「東京ボランティアナビ」を16年3月に開設。関連イベントの情報発信や、過去の五輪大会でボランティアに参加した人の体験談などを紹介している。また、街で困っている外国人客に声を掛け、簡単な外国語で手助けする「外国人おもてなし語学ボランティア」など、現在行われているボランティア活動も掲載している。
さらに、17年度からは「ボランティア休暇」制度を設けた企業に対して、1社当たり20万円の助成金を支給する制度を創設する。中小企業を含む約500社を対象とし、働く人でも参加しやすい環境を整えていく。
公明も推進
都議会公明党は、都民にボランティアへの参加を促す取り組みを積極的に推進。15年12月の第4回定例会の本会議では、たちばな正剛議員（都議選予定候補＝板橋区）がボランティア人材の育成を主張していた。
役立つ経験
東京マラソン 1万3000人が活躍
東京五輪で、そのノウハウの活用が期待されているのが、毎年2月に開催される東京マラソンを支えるボランティアの存在だ。
毎回、3万人を超すランナーが出場する同マラソンでは、スタッフとして今年は延べ約1万3000人のボランティアが活躍した。
ボランティアは、大会3日前からのランナーの受付をはじめ、当日の手荷物預かりや、コース整理、給水など30近くの活動に当たる。
これらの活動を円滑に進める工夫として、ボランティア約20人を1班とする約600のグループが、各「リーダー」を中心に活動。さらにボランティア経験豊かな人が「リーダーサポート」となり、そのリーダーたちを支援している。
今年2月に、スタート地点でのリーダーサポートとしてボランティアをまとめた枝野恵美子さん（仮名）は「ボランティアの方々が臨機応変に対応してくれたので、大きなトラブルもなく、スムーズにスタートを切ることができました」と振り返る。東京五輪のボランティアについては、「関心があります。できれば、ボランティアの方々が円滑に活動できるようなお手伝いをしたい」と話す。
東京五輪のボランティア戦略策定などに携わっている東京マラソン財団の山本悦子・ボランティアセンター長は「07年から続く東京マラソンでは、ボランティアが試行錯誤を繰り返す中で、大会運営を支え続けてくれている。このノウハウや経験を東京五輪に生かせるよう、都や大会組織委員会と連携していきたい」と述べていた。
