e若年性認知症 就労支援の強化が欠かせない
- 2017.05.08
- 情勢/解説
公明新聞:2017年5月4日(木)付
高齢者だけでなく、若年者も発症する認知症。国を挙げた支援を急ぎたい。
認知症に関する国際会議が先月、京都市で4日間にわたり開催され、アジアやアフリカからの参加者が増えるなど、認知症対策が世界的な課題となっていることを印象づけた。世界保健機関(WHO)も今月開かれる総会で、認知症に関する「行動計画」の策定に取り組むという。
京都会議では、さまざまなテーマについて研究成果の発表や意見交換が行われたが、新たな論点として「若年性認知症」が取り上げられたことに注目したい。
65歳未満で発症する若年性認知症の患者は、日本国内に約4万人いると推計される。発症年齢は平均51歳。働き盛りの人が物忘れの症状で業務に支障が出て失職するケースも少なくない。
家計の担い手が発症すれば、収入を得る手だてが断たれ、一家は経済的な苦境に立たされてしまう。これに治療費や介護費用が追い打ちをかける。精神的な負担も計り知れない。
しかも、若年性認知症は進行が早い。診断が遅れたり、サポート体制に手間取ると一層深刻になりかねない。
若年性認知症の患者やその家族の悩みに寄り添い、どう支えていくか。とりわけ就労の問題にどう対応するか。この点で、東京都の取り組みは参考になろう。
都は、全国に先駆け、ワンストップ相談窓口「若年性認知症総合支援センター」を、目黒区と日野市の都内2カ所に開設した。これは都議会公明党が強力に推進し実現したものだ。専門スタッフを配置し、就労支援や医療機関の紹介のほか、各種社会保障の手続きに関する助言を行っている。
中でも、若年性認知症によって失職した人が再就職するのは困難なことから、スタッフが患者の勤務先を訪ねて就労継続などで協力を求めるのも同センターの特長だ。
政府も、若年性認知症対策を認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の柱の一つに据え、17年度末までに専門支援員を47都道府県に配置する方針を示している。就労支援の強化につなげていきたい。