e医療ビッグデータ 予防や新薬開発へ活用したい
- 2017.05.08
- 情勢/解説
公明新聞:2017年5月6日(土)付
世界に例のない超高齢社会に向かう日本にあって、国民の願いである健康長寿の後押しとなることを期待したい。
個人の医療に関する情報を民間事業者が匿名に加工し、大学や製薬会社に提供できるようにする新法「次世代医療基盤法」が成立した。1年以内に施行される。
同法の目玉は、病院などに蓄積されている患者についての膨大な電子情報、すなわちビッグデータの共有・活用を可能にすることだ。
個人の病歴など医療機関ごとに保有されている情報を集約し、人工知能(AI)などで分析することで、医療が飛躍的に進歩するといわれている。
例えば、同じ病気を発症した各地の患者について、年齢や性別、病状の変化、服薬の種類や量、手術の方法と回復状況、合併症の有無といったデータを集め、詳細に分析すれば、個々の患者に最適な治療法を選択でき、予防法の確立にもつながるという。データの集約が実現すれば、国民の健康増進や病気の治療に大きく役立つに違いない。
ただ、これまで医療ビッグデータの活用は進まなかった。医療に関する個人情報を取り扱うだけに、その保護に関する体制づくりに万全を期す必要があるからだ。
このため同法では、電子カルテや投薬、副作用などの診療データについて、安全に匿名加工する技術を持つ事業者を国が認定する仕組みを導入した。
医療機関は、認定事業者に医療情報を提供することを患者へ事前に伝えた上で、拒否されない場合に限り事業者に提供できる。
認定事業者の詳細な要件については今後、政令で定められる。情報の漏えいや改ざん、悪用を防ぐため、運用・管理体制の整備や不正アクセス対策の充実、多重の防御策など、セキュリティーを最優先に検討しなければならない。
また、事業者の認定に当たっては、その過程を可能な限りオープンにし、国民の納得を得る努力が求められよう。国民皆保険のわが国には、医療に関する質の高い情報が蓄積されている。こうした貴重な情報を有効活用するためには、国民の信頼が欠かせないことを強調しておきたい。