e医療・介護のICT化

  • 2017.05.10
  • 情勢/テクノロジー
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公明新聞:2017年5月10日(水)付



遠隔診療で患者を支援
生活習慣病予防などに効果



医療分野においては、インターネットを使った遠隔診療への期待が高まっている。離島など専門医が不足する地域で、かかりつけ医が患者の病状の経過観察や健康管理をしやすくなることが見込まれるからだ。

具体的には、パソコン画面を通して対面診療と組み合わせたオンライン診察をはじめ、血糖値や血圧などのデータを患者から入手して指導することで、糖尿病など生活習慣病の予防などにつなげていく。

4月に開かれた政府の未来投資会議では、医療・介護分野のICTの活用が議論され、議長の安倍晋三首相は「新しい医療を次の(2018年度)診療報酬改定でしっかりと評価する」と表明。医療保険から病院などに支払われる診療報酬について、対面診療に比べて評価の低い遠隔診療の増額を検討する考えを示した。

また、膨大な電子情報である医療分野のビッグデータの有効活用も注目されている。治療が難しい疾患でも、人工知能(AI)など最新技術を駆使してデータを分析すれば、患者個人の症状や体質に応じた正確な検査・診断、治療に道が開けるからだ。

4月28日には、医療機関が蓄積している診療データについて、研究開発目的での二次利用を促す「次世代医療基盤法」が国会で成立した。ビッグデータを活用して、新薬開発や新たな治療法の研究につなげることが狙いだ。

国レベルでは現在、医療のレセプト(診療報酬明細書)情報や健診などに関する各種データベースの整備が進んでいる。だが、それぞれのデータベースは連結されておらず、収集した情報を総合的に分析・活用するまでには至っていない。

そこで、政府はICTを活用した体制を20年に本格的に稼働させるため、AIを用いた診療支援の開発や、医療・介護に関するデータベースの連結などに積極的に取り組む方針だ。


介護の負担ロボットで軽減


高齢者の見守りに活用も

介護分野におけるICTの活用も関心が高い。

政府は、センサーを使った独り暮らしの高齢者の見守りシステムや、介護現場の負担を軽減する介護ロボットの開発・普及を加速させていく。介護ロボットの導入についても介護報酬を上乗せする方針だ。ビッグデータの活用により、科学的に裏付けられた介護プランの作成も期待されている。

さらに、医療や介護など関係機関のネットワーク化も進めていく。医師らが各種情報を共有し、患者や要介護者らがどこに住んでいても切れ目のない診療・ケアを受けられるようにするのが狙いだ。どの医療機関でも健診や診察の結果を確認できるので重複検査などを防ぐこともできる。

既に、長崎県や岡山県では、一部の病院や診療所などがネットワークを構築し、患者の治療や調剤に関する医療情報などを共有している。

政府は住み慣れた地域で医療や介護、生活支援などが受けられる「地域包括ケアシステム」の普及を進めており、その具体策の一つとしても全国規模での情報ネットワークの構築は必要である。

医療・介護分野におけるICTの活用をめぐり、公明党は16年12月、ICT社会推進本部(高木美智代本部長=衆院議員)を立ち上げ、その下に医療等現場におけるICT利活用推進委員会(輿水恵一委員長=同)を設置。同委員会が中心となり、医療・介護の地域連携システムの現地視察など調査活動を続けている。輿水委員長は「ICT導入の効果を医療・介護サービスの受益者に実感してもらうことが大切だ。メリットを丁寧に説明していきたい」と語っている。

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