e地方大学の振興  一極集中是正の"決定打"に

  • 2017.05.15
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年5月13日(土)付



古里に若者を取り戻し、地方創生に弾みをつけることができるかどうか。政府の覚悟が問われることになろう。
東京一極集中の是正に向けて地方大学の振興策を検討している政府の有識者会議が、東京23区内にある大学の定員規制などを盛り込んだ中間報告案を取りまとめた。6月に策定予定の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に反映される。
地方大学の振興は、地方創生に関する2015年度からの5カ年計画「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の改訂案に盛り込まれ、昨年末に閣議決定された。
背景にあったのは、全国知事会の要望だ。昨年11月、地方の若者が東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県)に流出する要因に大学進学があるとして、政府に対応を求めていた。
実際、文部科学省の資料によると、全国の学生総数の40%が東京圏に集中し、26%を東京だけで占めている。定員割れが目立つ地方の大学とは対照的な"盛況ぶり"で、人口減に悩む地方が危機感を持つのは当然といえよう。
中間報告案は「(こうした状態を)本気で是正するには、地方大学の振興と東京の大学の新増設抑制策をセットにした抜本的な対策」が必要として、都内23区にある大学の定員増を原則として認めない新たな法規制の導入を提案。学部新設の場合でも、既存学部を改廃して全体の定員が増えないようにすることを義務付けるとしている。
ただ、法的措置となると大学運営の自主性を制限し、教育現場の自由な気風を阻害しかねない。(1)地方へのサテライトキャンパス設置(2)東京と地方の大学間での相互単位制度の促進―など中間報告案に盛り込まれた他の方策との整合性を図りながら、慎重に運用することが求められる。
それにも増して重要なことは、地方の大学自体の魅力アップだろう。地元の自治体や企業などと協働し、地域の雇用創出や学卒者の地元定着につながる"現場発の教育改革"が欠かせない。
地元の高校生ばかりか、首都圏の受験生も憧れる大学を創る―。そんな気概で地方ならではの個性的な大学づくりに挑んでほしい。

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