e豪雨・水害対策 「逃げ遅れ」の悲劇なくすには

  • 2017.05.16
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年5月16日(火)付



洪水や土砂災害が発生し、高齢者や障がい者といった災害弱者が逃げ遅れる―。こうした悲劇を防ぐ備えを各地で進めたい。

水害対策を強化する改正水防法などが成立した。昨夏の台風10号で岩手県内の河川が氾濫し、高齢者施設の入所者9人が死亡した被害を受けたものだ。3カ月以内に施行されるが、国は、大雨による洪水が起きやすい出水期前の施行をめざしている。既に沖縄・奄美地方は梅雨入りした。施行を急ぐ必要がある。

改正法の最大のポイントは、河川が氾濫した際の浸水想定区域内にあって、高齢者や障がい者、入院患者など配慮が必要な人が利用する施設に対し、避難計画の策定や訓練を義務付けたことだ。

被害に遭った岩手県の高齢者施設では、水害時の避難計画がなく、避難訓練も行われていなかった。改正法の対象となる全国約3万施設のうち、昨年3月時点で避難計画を策定した施設は2%余りにとどまる。「2%」とはいかにも少ない。

政府は、2021年度までに全ての対象施設が計画策定を完了するとの目標を掲げている。ただ、限られた人員の中で、避難計画の策定や避難訓練に取り組む施設側を、どうサポートするかを忘れてはなるまい。

国土交通省は現在、高齢者施設などが避難計画を策定するための手引きの改訂に向けた検討を進めている。施設のスタッフや入所者に分かりやすく、実効性のある計画作りが進むよう、きめ細かく支援をすべきだ。

また改正法は、浸水想定区域が設定されていない中小河川でも、市区町村長が過去の大雨による浸水状況を住民らに周知するよう求めている。

地域の水害リスクを公にすることは「地価の低下を招く」などの懸念もあろうが、最優先すべきは人命だ。積極的な公表と対策を進めるべきが第一義だろう。

国交省は、東京都内を流れる荒川の氾濫に備え、流域の北・足立・板橋の3区を対象に行政機関や福祉施設、住民などが取るべき行動を時系列で定めた防災行動計画(タイムライン)の運用を開始している。こうした先進事例も全国に広げたい。

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