e視覚障がい者 通勤付き添いサービス
- 2017.05.25
- 情勢/社会
公明新聞:2017年5月25日(木)付
移動に不慣れな転入者対象
一人の声を受け公明区議が実現
東京・世田谷区
東京都世田谷区は4月から、障がい者の外出をサポートする区の移動支援事業の規定を改正し、区内に転入してきて地域に不慣れな視覚障がい者が、通勤時にヘルパーの付き添いサービスを利用できるようにした。公明党の岡本宣子区議が、視覚障がい者の移動の安全確保を求める一人の区民の声を受け、議会で提唱し実現に結び付けた。
「通勤時の利用が認められた。区議会で取り上げてもらい、うれしい」。岡本区議にこう語り掛けるのは、区内のNPO団体で活動する茅野建文さん。
昨年8月、茅野さんの知人で視覚障がいのある50代男性が、都内の地下鉄駅ホームから転落し、電車にはねられて亡くなった。事故に遭ったのは、この男性が北海道から区内に転入して約半年で、その日は盲導犬を連れて職場から帰宅する途中だった。
事故後すぐに茅野さんは、交流のあった岡本区議に連絡を取り、事故に心を痛めた視覚障がい者の声や自身の思いをぶつけた。
「盲導犬を連れていても100%安全とはいえない。視覚障がい者が安心して暮らせるよう、仕事でも利用できる移動支援を検討すべきです」
視覚障がい者が外出する場合、危険から身を守るためには大変な困難や不安がつきまとう。国は障害者総合支援法に基づいて、買い物や通院など日常生活に欠かせない活動にガイドヘルパーが付き添う「同行援護」制度を設けているが、通勤での利用は認められていない。
一方、自治体が行う移動支援は、それぞれ独自に利用要件を定めることができるが、世田谷区では国の考え方を踏まえ、通勤を対象外としていた。
茅野さんの声を受け止めた岡本区議は、昨年9月定例会で「視覚障がい者が日々、命の危険にさらされながら通勤している」と指摘し、通勤時の移動支援を認めるよう要望。これに対し、区側は「対応を早急にしたい」と答弁していた。
区障害施策推進課によると、通勤時の付き添いは区内に転入して半年程度の住民が対象。利用料の自己負担は原則1割で、サービスを受けられる期間は、おおむね3カ月まで。勤務地や勤務先が変わった場合などは、通勤上の安全確保の必要性を踏まえ、柔軟に応じていくという。
茅野さんは「視覚障がい者の社会参加を支える一歩。安全に移動できる取り組みが、さらに広がってほしい」と切望していた。岡本区議は「移動支援の拡充などを進め、安心して外出できる街づくりに全力を注いでいく」と約していた。