e教員の過酷勤務 改善を
- 2017.06.01
- 情勢/社会
公明新聞:2017年6月1日(木)付
中学の6割 残業月80時間超す
「深夜0時まで学校」「休みない」
文科省調査で判明
文部科学省が4月28日に公表した公立小中学校教員の勤務実態調査(2016年度=速報値)で、1カ月の時間外勤務が、月80時間を超える教諭が小学校で34%、中学校では58%もいるなど過酷な勤務実態が明らかになった。学校現場の教員から話を聞いた。
◆若手教諭
30代の男性教諭は、都内の小学校で教壇に立って今年で7年目。現在、6年生の学級担任だ。仕事にやりがいは感じる半面、「業務に追われる毎日」に心身ともに疲労はたまる一方だ。
朝7時半に学校に着くと、校内で児童の登校見守り。授業の合間や放課後を使って、保護者への連絡帳の記入やテストの採点、そして翌日の授業準備、行事の打ち合わせと息つく間もなく仕事をこなしていく。どれも大切な業務だ。気が付くと、いつも夜9時すぎまで学校に残っている。「学校現場は慢性的な人手不足。とにかく忙し過ぎる。英語などの専門教科は他の人にお願いしたい......」との心情を語ってくれた。
都内の中学校で社会科を教える30代の女性教諭は、文化系と運動系の二つの部活の顧問を務める。「平日は夕方6時まで部活。大会が近づくと、練習などで土日の休みがなくなる。どこかで割り切らないと休みが取れない状況です」と語る。
◆管理職、ベテラン
「教頭になった年は、毎日、深夜0時まで学校にいた」と語るのは、埼玉県内の中学校で教頭を務める50代男性だ。主な仕事は施設管理と事務処理。「校内の草むしりも教頭の仕事。丸1日かかるときもある」という。学校に依頼が来る各種調査の集約も担うが「毎年同じような内容の調査も多く、手間ばかりかかる」と事務の簡素化を訴える。
また、ある県内の中学校に勤務する40代の男性教諭も、事務作業に負担感を感じる一人だ。学校の会計担当として金融機関に出向いたり、部活動の指導があるため、本来行うべき事務はいつも夜に後回し。このため残業時間は月125時間を超えることも珍しくないという。「本当に事務作業が多くて、毎日職員室にこもりっきりだ」と明かす。
授業・部活増で負担深刻
専門家派遣など軽減策検討へ
今回の文科省の実態調査では前回調査(06年度)と比べ、教諭や校長ら全職種で勤務時間が増えた。
例えば、教諭の場合、平日1日当たりの平均勤務時間が、小学校で11時間15分(前回比43分増)、中学で11時間32分(同32分増)。副校長・教頭の場合は、小中ともに12時間を超える。
業務別に見ると、1日当たり「授業」が小学校で27分、中学で15分増え、「授業準備」も小学校で8分、中学で15分増加した。これは"脱ゆとり教育"を掲げる学習指導要領改定により、前回調査時から授業コマ数が増えた影響とみられる。
さらに、中学では土日の「部活動・クラブ活動」が前回の1時間6分から2時間10分にほぼ倍増しており、教員の長時間勤務の一因と指摘されている。
こうした状況を改善するため、同省は17年度、学校現場の業務改善に取り組む大学教授や民間企業のコンサルタントら21人を「学校業務改善アドバイザー」に任命。学校の管理職向けの研修を開いたり、学校に出向いて部活動の負担軽減や業務の簡素化につなげる仕組みづくりを助言してもらうことにした。
また、同省は今年3月、部活動の指導や大会への引率を行う「部活動指導員」を学校に置けるよう省令を改正。地域のスポーツ指導者ら外部人材を活用して教員の負担軽減を図る方針だ。
「看過できない」公明、首相に緊急提言
教員の長時間勤務の実態を重く見た公明党は、即座に行動を開始している。文科省が調査結果を発表した4月28日には、井上義久幹事長が「看過できない。公務員の『働き方改革』へ早急に改善策を講じるべきだ」と主張。その後の5月22日に、党教育改革推進本部(本部長=富田茂之衆院議員)が中心となって、安倍晋三首相に教職員の「働き方改革」を求める緊急提言を申し入れた。
提言では、教員の待遇改善策として、(1)部活動指導員の配置の抜本的充実など部活動業務の軽減(2)ICTの活用などによる学校業務の効率化や勤務時間の適正な管理(3)教員をサポートする専門スタッフの増員――などを提案。安倍首相は、提言について「大変重要な提案」と述べ、具体化をめざす考えを示した。
翌23日には、党政務調査会に「教員の働き方改革検討プロジェクトチーム」(座長=河野義博参院議員)を設置。引き続き教員の勤務環境の改善に取り組んでいく。