e改正民法20年めど施行
- 2017.06.05
- 情勢/解説
公明新聞:2017年6月4日(日)付
答える人 国重徹さん
党法務部会長(衆院議員)
私たちの生活に関わりが深い商品の売買や不動産の賃貸借など、契約に関する大幅なルール変更が盛り込まれた改正民法が5月26日、成立しました。改正の背景や法律の内容などを国重徹・党法務部会長(衆院議員)に聞きました。
女性 120年ぶりに民法が見直されると聞きました。
国重 契約など債権関係の抜本的な改正は、民法が制定された1896年(明治29年)以来、初めてのことです。3年後の2020年をめどに施行されることになっています。
女性 なぜ、見直されることになったの?
国重 民法の中の財産に関することは、裁判所の判例(過去の判決の実例)や専門家の法解釈が定着し、条文に載っていなくても、実務上は問題ありませんでした。しかし、近年のインターネット取引の普及や長引く低金利など、社会・経済情勢が大きく変化したことに対応し、さらに国民に分かりやすい法律にするという観点から全般的に見直しました。
ロボ 生活に密着していても、法律に明記されていなかったことはありますか。
国重 はい。保険・クレジットカードの契約、インターネット通販などで幅広く使われている「約款」をご存知ですか。
ロボ 細かい字でびっしり書かれているものですね。
国重 そうです。約款は企業などが多数の消費者と同じ内容で契約するための文書ですが、現行法に規定はありません。改正民法では契約ルールを合理化し、また、消費者保護の強化を図るため、「定型約款」の項目を新設しました。約款が契約内容になると明示している場合、消費者が内容を理解していなくても契約は有効であると明記しました。その上で、消費者に一方的に不利な契約内容は無効とすることも明文化しています。
ロボ 判例で定着したルールで条文になったものはありますか。
国重 住宅の賃貸借契約を結ぶ際の「敷金」がそうです。敷金は「(賃料など)債務を担保する目的で、賃借人(借り主)が賃貸人(家主)に交付する金銭」と規定しました。そのため、原則として退去時に敷金は返還することとし、通常の使用によって生じた損傷や経年劣化で傷んだ場合には、借り主の負担は必要なしとなりました。
また、高齢社会の到来を踏まえ、重い認知症などを患い、正常な判断ができない人との契約は「無効」であることも条文に明記しました。
女性 変更になった内容もありますか。
国重 中小企業が事業用の融資を受ける際、経営に関わりのない親族などの第三者が連帯保証人となる場合は、公証人が意思を確認し、公正証書を作成することも義務付けました。
また、未払い金を受け取れる期限を「債権の消滅時効」と言いますが、現行法では原則、10年となっているものの、飲食代の未払い金(ツケ)は1年、弁護士報酬は2年、医師の診療報酬は3年など、業種によってまちまちでした。これを「権利を行使できると知った時から5年」もしくは「権利を行使できる時から10年」にしました。
この他、交通事故の損害賠償などに適用される法定利率については、従来の年5%から年3%に引き下げ、その後、3年ごとに利率を見直す変動制とすることを盛り込むなど、改正民法全体で、およそ200項目に及ぶルールが変更されています。