eがんとの共生 働き続けられる環境どう築くか
- 2017.06.09
- 情勢/解説
公明新聞:2017年6月9日(金)付
がんを患っても、できるだけこれまでと変わらぬ生活を送ることはできないか―。こうした切実な思いに応える対策を進めたい。
厚生労働省が、今後6年間のがん対策の方針を示した「第3期がん対策推進基本計画案」を取りまとめた。今夏にも閣議決定される予定だ。
「予防」「医療の充実」「がんとの共生」の3点が柱となっており、具体策として、自治体が行うがん検診の受診率を現在の30~40%台から50%に引き上げることや、希少がん・難治性がん対策の充実などが盛り込まれた。
がんは日本人の2人に1人が生涯のうちにかかる"国民病"とさえ言われている。若くして患者となる人もいる。それだけに、基本計画案の柱のうち「がんとの共生」という視点は、今後ますます重要になるであろう。
とりわけ急ぐべきは「治療と仕事の両立」を可能にする就労支援ではないか。
内閣府の調査によれば、「治療と仕事の両立が難しい」とする患者は65%に上る。実際、がん患者の3割は離職を余儀なくされているのが現状だ。
しかし医療の進歩に伴って、がんは"不治の病"から"長く付き合う病"へと変わっており、働くがん患者は32万人を超えている。「短時間勤務」や「柔軟な休暇制度」など、がんになっても働き続けられる環境の整備は喫緊の課題である。
ただ、企業側が抱える課題にも目を向ける必要があろう。がん患者の治療と仕事の両立支援に関する民間調査によると、中小企業経営者の約6割が「両立は困難」と回答している。がん患者を雇用する負担は決して小さくないことがうかがえる。
この点、参考になるのが東京都の取り組みだ。がんや難病と闘う患者を新たに採用したり、休職していた人を復職させた上で継続して働けるよう勤務体系や休暇制度などで後押しするなど、治療と仕事の両立に配慮する企業に対し、1人当たり最大60万円を支給する制度が今月からスタートした。都議会公明党が推進したものだ。
がん患者が希望を失うことがないよう、きめ細かい支援策が求められている。