e熊本地震1年2カ月宅地被害 癒えぬ不安
- 2017.06.14
- 情勢/社会
公明新聞:2017年6月14日(水)付
生活再建の見通し立たず
公明議員が熊本市南区で 梅雨の二次被害防止へ調査
熊本地震の発生から1年2カ月。傾斜のある造成宅地は、梅雨入りに伴う地滑りなどの二次被害が危ぶまれ、地盤の安全確保を求める住民の声は尽きない。熊本市南区城南町の鰐瀬地区もその一つ。公明党の前田憲秀県議と浜田大介市議は8日、同地区の被災状況を調査し、住民から要望を受けた。=熊本地震取材班
「道路のひび割れは今もじわじわ広がっている。大雨になれば、いつ地盤が滑落してもおかしくない」。こう不安をこぼすのは、鰐瀬地区で豊田校区第6町内自治会長を務める艶島敬昭さん(68)だ。
同地区は山を削り、盛土で谷を埋めるなどしてつくられた傾斜のある造成宅地。市道に認定されていない共有道路の至る所に亀裂が走り、南側の地盤は約15センチ沈下。「地震後、皆で協力して地割れに生コンクリートを流し込む応急処置を行ってきたが、もう限界。早急に行政の力で何らかの対策を打ってほしい」。住民の声を代弁するように艶島会長は語気を強めた。
同地区では今後、大規模な盛土造成地の滑動崩落を防止する国庫補助事業の実施に向け、測量設計やボーリング調査などが行われる予定。市震災宅地対策課によると、市内9地区が同事業の対象地域となっており、「時間をかけないよう今年度中に工事発注まで進めたい」と意気込みを語る。
とはいえ、工事終了は早くても2018年度になる見込み。今なお傾いた自宅に住む吉本美枝子さん(66)は「一日も早く地盤の安全性を確保してほしい。このままでは自宅の傾きを直すジャッキアップ作業にも踏み出せない」と肩を落とす。自宅の大規模半壊で仮設住宅に身を寄せる河上トシ子さん(73)は、「生活再建の見通しは不透明。可能な限り、仮設に住ませてほしい」と、入居期限(2年間)の延長を求めた。
こうした住民の切実な声を聞いて回った前田県議と浜田市議は、艶島会長の案内で地盤沈下による地割れ箇所を視察。調査を終えた前田県議は「寄せられた要望を県当局へ届け、市と連携しながら対策を講じていく」と述べ、浜田市議は「6月定例議会でしっかりと訴えていく」と約した。
仮設住宅の期限延長を
地滑り対策、県復興基金で 市議会で浜田議員
12日に開かれた熊本市議会の第2回定例会で一般質問に立った浜田議員は、宅地復旧に関する国庫補助事業などに触れ、「被災者の住宅再建は、事業の進捗状況に左右される」と指摘。とりわけ、応急仮設住宅などで生活する被災者にとって「入居期限(2年間)内で住宅再建することは難しい」と訴え、期限延長に向けた取り組みを求めた。
これに対して古庄修治市政策局長は、「他の市町村と連携しながら必要に応じて県を通じて国と協議していく」と答えた。
さらに、浜田議員は、梅雨入りに伴う事業対象地域の地滑りなどの二次被害の危険性や、地盤の安全性が確保されるまでジャッキアップ作業に踏み出せず、傾いた家に住み続けざるを得ない住民の窮状を力説。こうした住民の不安を取り除く丁寧な対応とともに、地滑りの応急処置については、県の復興基金を活用するよう訴えた。